風雲
ストームライダーズ

1999/12/16 映画美学校試写室
香港の人気マンガを映画化した荒唐無稽な剣戟アクション映画。
千葉真一が悪役・雄覇(ホンファ)役で出演。by K. Hattori


 力のある者が武力で勢力を拡張していた乱世の中国。武闘組織“天下会”を率いた雄覇(ホンファ)は覇王となる野望を胸に秘め、着々と勢力を伸ばしていた。占い師から「あなたの人生前半は、風雲ふたつの力によって大きく伸びる」と告げられた雄覇は、風(フォン)と雲(ワン)という名を持つ少年ふたりを探し出して、天下会の幹部へと育て上げる。占いの通り、ふたりの働きで雄覇は天下のほぼすべてを手中にするまでになった。だが雄覇が姿を消した占い師を捕らえて問いつめたところ、「あなたの人生後半は、風雲によってさえぎられる」と前とは正反対の予言をされてしまう。雄覇は謀略を巡らして風と雲を仲違いさせようとするのだが……。

 原作は香港の人気漫画だそうで、物語は気宇壮大にして荒唐無稽、アクションシーンは特撮とCGを駆使したサーカス状態だ。雄覇役は日本から香港に乗り込んだ千葉真一、風役に『古惑仔』シリーズのイーキン・チェン、雲役には『アンナ・マデリーナ』のアーロン・クォックが扮している。監督は『古惑仔』シリーズのアンドリュー・ラウ。クリスティ・ヤンが雄覇の娘で風・雲ふたりに愛される悲劇のヒロインを演じ、『ゴージャス』『瑠璃の塔』のスー・チーが脇役で登場している。

 野心と権力欲に取り憑かれた悪役・雄覇。甘いマスクでソフト路線の風。無口だが情熱を内に秘めた硬派路線の雲。こうした登場人物のキャラクターが明確なので、話自体はじつに単純。しかし映画の序盤から、僕はすっかりミスリードされてしまった。実際に名前と顔を覚えておかなければならない人物はごく少数なのだが、新しい人物が登場するたびに画面に人名のタイトルが物々しく登場するため、「これも覚えておかなければならないのだろうか?」と身構えてしまう。ひょっとしたら原作の漫画が大長編大河ドラマで、こうした脇の人物にもそれぞれのエピソードがあるのかもしれないが、映画を観ている側にはそうした都合など無関係。わずか1シーンにしか登場しない人物まで、いちいち名乗りを上げられる必要などないのだけれど……。

 映画は後半になって、雲が雄覇のもとを離れたあたりから面白くなってくる。アクションシーンが増えてきて、しかもその内容がどんどんエスカレートしていくのだ。最初の内は通常の体技の延長上で特撮を使っていたものが、やがては肉体の制約を離れた別次元へと昇華してしまうものすごさ。もはやそこに、通常のチャンバラやカンフーは存在しない。あるのは人間を媒介にした、純粋なアクションのみだ。特撮技術やアクション撮影技術云々ではなく、これはもう、こんな展開を考えてしまった物語作りのアイデアに感服してしまう。『スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス』や『マトリックス』が香港映画のアクションシーンをどんなに意識しようと、『風雲 ストームライダーズ』のものすごさはその5年先を行っている。こんなことが許されるのは、やはり香港映画だけだろう。

(原題:風雲)


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