ゴジラ2000
ミレニアム

1999/11/16 東宝第1試写室
4年ぶりに復活した本家東宝のゴジラだが内容はイマイチ。
物語が場当たり式で全体の構成が無茶苦茶。by K. Hattori


 最新特撮を駆使したハリウッド製作版の登場でとどめを刺されるかに思えたゴジラ・シリーズも、当のアメリカ版『GODZILLA・ゴジラ』のデキがあまりよくなかったために堂々と復活。しかしそのわりには、こちらの映画もあまりデキはよくないと思う。せっかく満を持しての新作なんだから、脚本でもう少し考えてくれ。特撮のレベルではどのみちハリウッドにかなわないことがアメリカ版で立証されたのだから、あとは日本のゴジラならではの「怪獣映画テイスト」「特撮マインド」「本家本元の意地」で勝負するしかないでしょうに。

 今回の映画で感じたのは、言わずと知れた平成『ガメラ』3部作の影響力。ゴジラに比べればガメラなど傍流であり亜流であるはずなのに、ものの見事に影響されています。面白い映画にインスパイアされて、新しい映画を作るのは一向に構わない。むしろ歓迎すべきことかもしれません。十年一日のごとく「東宝のゴジラ様」をお高いところに祭り上げておくよりは、外部からどんどん刺激を受けて、シリーズに新しい血を入れた方がいいのです。ただ今回僕が残念に感じたのは、影響の受け方が設定やディテールの「剽窃」レベルで止まってしまったことです。『ガメラ』シリーズの面白さは、SFとしてもレベルの高い大仕掛けな設定と、細部のディテールにあったはずです。小さな嘘を付きながら大ボラを吹くという原則が、そこには脈々と生きています。ところが今回の『ゴジラ2000・ミレニアム』に、そうしたディテールと大きな嘘は望めない。『ガメラ』シリーズの他にも、『ツイスター』『スフィア』など幾つかの映画からアイデアをパクっただけで、この映画自体のオリジナル・アイデアがまったく感じられないのです。

 物語は最初からゴジラの上陸とUFOの話に分裂してしまい、どちらに多くの比重をかけているのかわからない。ゴジラが北海道に上陸したのに、政府は日本海溝のUFOに夢中。UFOが浮上した後は、それを忘れてのこのことゴジラ退治に出かける。やることがすべて泥縄式で、先の見通しがまったく感じられない登場人物たち。いくつかのアイデアを強引に登場人物の台詞でつなぎ合わせ、じつに都合よく物語が進行して行く。

 これはゴジラ映画によくあることなのかもしれないが、とっておきの秘密兵器や最新の科学技術が、何の説明もなしに次々登場するのには戸惑う。スキャナを使って岩塊の中の生体反応を調べるとか、磁場を使ってUFOを固定するとか……。UFO攻撃に使ったあの武器はなんじゃ。フルメタルミサイルとはいったい何だ。米軍から劣化ウラン弾を借りてきたんじゃダメなのか。とっておきの秘密兵器は、ここぞというときに切り札として登場させないと、映画は何でもありになってしまう。そもそも怪獣映画なんて何でもありなんだけど、その何でもありの世界と我々の日常をつなぐには、やはり制約されたルールが必要なのです。そのあたりをもう一度よく考えた上で、来年の21世紀ゴジラを作ってほしい。


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