ゴージャス

1999/10/15 GAGA試写室
台湾から来た若い女と香港の実業家が恋に落ちる。
ジャッキー・チェンがこんな役とは……。by K. Hattori


 『ラッシュアワー』でハリウッドに本格進出したジャッキー・チェンの主演最新作は、古巣香港に戻って若手俳優たちと共演したアクション・ラブ・コメディ。『メッセージ・イン・ア・ボトル』と『プリティ・ウーマン』を足して2で割ったようなベタベタのストーリー展開に驚くが、アクション場面はいつもながらのジャッキー節。今回は『夢翔る人/色情男女』やウーロン茶のCMで知られる台湾出身の女優スー・チーがヒロインを演じ、ウォン・カーウァイ作品のレギュラーとして日本でも知られるトニー・レオンが脇役で登場している。

 ジャッキー・チェンの映画というのは香港映画の中でも一種独自のポジションにあって、ツイ・ハークやジョン・ウー、ウォン・カーウァイなどの若手映画人の作る映画とは、作品のテイストも出演者の顔ぶれもまるで別物だった。今回の『ゴージャス』では、ジャッキー映画が後発の若手映画人たちにすり寄っている。今までずっと「若々しくてやんちゃなヒーロー」を演じてきたジャッキー・チェンが、今回はビジネスの世界で成功した億万長者を演じているのも異色。年齢的なものもあるのでしょうが、こうしてジャッキーが「年輩の男」を演じるようになるなんて、今まで考えたこともなかった。ジャッキー・チェンの実年齢は45歳ですが、彼はいつまでも万年青年だと思ってたんだけど……。今回の役は彼が実年齢に相応する役柄へと脱皮して行く過渡期的な作品なのかもしれないけど、観ていてちょっと寂しくも感じてしまった。『フー・アム・アイ』でジャッキー・アクションの復活を観たばかりだけに、少しショックだ。

 台湾の小島で父親の食堂を手伝っている少女プウは、海辺でボトル入りの手紙を拾う。中にはロマンチックな愛のメッセージが入っていた。彼女は手紙の送り主を捜して香港へ。そこで出会ったのが、大金持ちの実業家C・N・チェンだった。彼の孤独をいち早く見抜いたプウは、彼の気持ちを慰めようとあの手この手で彼にアプローチ。やがてチェンとプウの間には愛が芽生えるのだが、チェンはその気持ちを素直に表現できない……。

 物語をリードするのはスー・チー演じる無垢な少女プウで、ジャッキーは今回物語の受け手になっている。ジャッキーの役柄がやり手のビジネスマンになっているので、お得意のアクションシーンには凄惨な殺し合いという要素が皆無。商売のライバルになった幼なじみが、ジャッキーに嫌がらせをして溜飲を下げようと、あれこれちょっかいを出してくる程度だ。それでも映画序盤の上着を使ったアクションや、数本の金属バットを使った乱闘シーンなどはそれなりに見せてくれるし、プロの格闘家との2度に渡るファイトは、猛烈なスピード感で目が回りそうになる高度な技を披露してくれる。

 若くて無垢な女の愛情が、頑なな年輩男性の心を虜にする……という、使い古されたラブストーリーではあるが、決して美人とは思えないスー・チーのナチュラルな魅力が古めかしさを忘れさせてしまう。

(原題:玻璃樽 GORGEOUS)


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