君のいた永遠(とき)
Tempting Heart

1999/09/24 徳間ホール
金城武主演。1970年代から始まる青春ラブストーリー。
もっと感動的な映画になるはずなのに……。by K. Hattori


 アジアの大スターとなった金城武の主演最新作。邦題を一般公募したことが話題になりましたが、映画を観終わってもこの邦題の意味はよくわかりませんな……。映画は1970年代から現代に至るラブストーリー。一組のカップルが出会いと別れを繰り返す構成は、ピーター・チャン監督の『ラヴソング』を思い出させる。共演はジジ・リョンとカレン・モク。監督・脚本は、日本では『恋人たちの食卓』や『レッド・バイオリン』などで女優として知られているシルヴィア・チャン。この映画にも、彼女自身が成長した主人公のひとりとして出演しています。日本では彼女の監督作品が公開されるのは初めてですが、じつは過去に何本も映画を撮っているベテランなんですね。今回は監督本人が映画監督という役で登場するので、まるで自伝的な映画のようにも見えてしまいますが、実際はこの映画の主人公たちより1世代上に属してます。この映画の主人公たちは1960年前後の生まれですが、チャン監督は'53年生まれ。だいぶ年齢にさばを読んでいるという見方もできるけど……。

 物語は現代から始まります。監督のシルヴィア・チャン本人が演じる女性映画監督シェリルは、自分自身の青春時代を振り返った1本の映画を作ろうと考える。それは'70年代半ばに始まった、17歳の女子高生シューヤウと19歳の浪人生ホークァンの恋の顛末。親の反対で引き離されたふたりは、数年後に社会人同士として再会。互いの心の中に残る恋心を確かめ合うように、ふたりは初めて結ばれる。だがその時、ホークァンには既に家庭があった。数年後、妻と離婚したホークァンはシューヤウに改めて結婚を申し込むのだが……。こうして物語は、20年間に渡る男と女の愛のドラマを綴ります。金城武はニキビ顔の浪人生から30歳代半ばまでを好演。それよりすごいのはシューヤウ役のジジ・リョンで、彼女は恋に戸惑う処女から成熟した女性までを、ひとりで演じきってしまう。なかなか大したものです。

 全体の構成を回想形式にしたのは、20年という時間の流れを描くには好都合。細かく時間を前後させながら、主人公たちそれぞれの事情を時には隠し、時には真相を明らかにしながら、時間の中で途切れることなく続く愛情の行方を追いかけ続ける。しかしこの構成が、感情の流れを遮ったり断ち切ったりすることがあるのも事実。シェリルが登場する現代の場面はもっと減らして、過去のシーンを中心に物語を作っていった方がよかったようにも思う。例えば『スタンド・バイ・ミー』『フライド・グリーン・トマト』『タイタニック』などは、過去が現代に語りかけ、現代が過去を批評する。こうした過去と現代のバランスに、もう少し気を配ってほしかった。

 エピソードの組立方や見せ方次第では、もっと感動的な映画になったと思う。ラストシーンの1点に向けて、もっと緻密に物語を構成しておいてほしかった。それぞれの人物は魅力的にできているだけに、映画を観終わった後で中途半端な印象しか残らないのは残念だ。

(原題:動心 Tempting Heart)


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