クルーエル・インテンションズ

1999/09/16 SPE試写室
ラクロの「危険な関係」を現代の高校生たちの物語に翻案。
映画は面白いが、この邦題には困るね。by K. Hattori


 18世紀に出版された書簡体小説の古典、ジョデルロ・ド・ラクロの「危険な関係」を現代の学園ドラマに翻案した異色青春ドラマ。「危険な関係」は過去に4回映画化されているが、僕は映画も未見なら小説も読んでいない。そんなわけで過去の作品との比較などできようはずもないのだが、今回のこの映画は滅法面白かった。フランス革命直前の社交界を舞台にした原作を、現代の高校生に置き換えたアイデアがなかなかの慧眼。親の財産で何不自由のない生活を送り、しかも学生身分であるが故に何重もの保護を受けている高校生たちは、犯罪さえ犯さなければ何をしても許される自由人たちだ。そこには生活の匂いが一切しない。18世紀の貴族に相当するのが、現代の裕福な高校生というわけだ。

 主人公は異母姉弟のキャスリンとセバスチャン。ふたりは周囲の人々を傷つけることで、自分たちのサディスティックな欲望を満足させている。ふたりにとって、他人をコケにするのはゲームのようなものだ。そのためには、どんな手だって使う。キャサリンはかつて交際していた恋人が、別の女とつきあい始めたことに腹を立て、相手の女セシルを徹底的にいたぶることを決意。プレイボーイとして向かうところ敵なしのセバスチャンは、新学長のお堅い一人娘アネットを口説き落とす難関に挑もうとしていた。キャサリンはセバスチャンの挑戦をダシにして賭を申し出る。キャサリンが勝てばセバスチャン自慢の車は彼女のもの、セバスチャンが勝てばキャサリンの肉体は彼のものになるという賭だ……。

 主人公たちが人を人とも思わぬ傍若無人ぶりを見せるピカレスク風の物語は、観ていて胸がすくような快感がある。やってることは最低なのに、ここまで堂々とやられてしまうと、もはや天晴れである。観ているうちにどんどんこちらの気持ちもエスカレートして、「もっとやれ〜!」という気持ちになってくる。セバスチャンがセシルをベッドから突き落とす場面には、心の中で拍手喝采してしまった。この映画を観ていると、「ダサイ女は死ね!」という主人公たちの気持ちを何となく支持したくなってきてしまう。ひどい話だけどね。映画は最後の最後に主人公たちが運命に復讐されるという道徳的なオチが付きますが、この映画のすごいところは、このオチに取って付けたような印象が微塵もないところかな。まさにこうした結論があるべきものであるかのような自然さで、しかも予定調和的な生ぬるさを感じさせることなく、物語はエンディングを迎える。

 1時間37分という上映時間は最近の映画の中ではすごく短い方だが、演出にはスピード感があるしテンポもいい。特に序盤から中盤にかけての流れは素晴らしい。出演はサラ・ミシェル・ゲラー、ライアン・フィリップ、リース・ウィザースプーンなど。監督・脚色はロジャー・カンブル。主演のフィリップとウィザースプーンは、この映画がきっかけで結婚してしまいました。なんか、それもすごい話だなぁ……。

(原題:CRUEL INTENTIONS)


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