フー・アム・アイ

1999/08/26 松竹試写室
記憶喪失になった特殊工作員が事件の真相を探るアクション巨編。
ジャッキー・チェンはやっぱりスゴイぞ! by K. Hattori


 ジャッキー・チェンが記憶喪失の元特殊工作員に扮し、自分が関わった科学者誘拐事件の真相を暴くアクション巨編。誘拐事件の証拠を隠滅するため、作戦に関わった工作員たちは全員が殺されるが、ただひとり墜落するヘリからの脱出に成功したのが、ジャッキー扮する主人公だ。墜落のショックで記憶を失った彼は、助けたアフリカ人たちに「僕は誰だ?(Who am I?)」と叫び、「フーアムアイ」が彼の呼び名として定着してしまう。ラリーの車に同乗して町に出たフーアムアイはマスコミの取材にあい、誘拐事件の首謀グループから再び命を狙われることになる。一方、科学者を誘拐された側も、警察を使ってフーアムアイを逮捕しようとする。警察と誘拐グループの双方に追われるフーアムアイは、誘拐事件の真相を探るためにロッテルダムに向かう……。

 全編がアクションに次ぐアクションの連続。これは『ナイスガイ』や『ラッシュアワー』を観て、「最近のジャッキーには往年のキレがない!」と嘆いていたファンの溜飲を一気に下げる快作です。シナリオもよくできているし、物語のスケールも大きい。「こんなアクション観たことない!」と言わせる大スタント・シーンが次々に登場して、観客を唖然とさせること必至です。序盤は主人公が重傷を負って寝ているのでアクションは少な目ですが、中盤の大カーチェイスから俄然ヒートアップ。舞台がロッテルダムに移ってからは、息を継ぐ間もないほどアクション・シーンが続きます。この映画のカーチェイスは、ここ数年の映画で観た中で3本の指に入るでき。(ちなみに残り2本は『RONIN』の高速道路逆走と、『ピース・キーパー』のビル屋上でのチェイス。)横倒しになった車が、そのまま自力で走り続ける場面には唖然としました。

 クライマックスは、ビルの屋上から命綱なしで斜面になった壁をすべりおりる場面。最後のNG集を観ると、途中にネットを張ったりして、何度かに分けて撮っているのがわかりますが、これは高所恐怖症の人間にはオシッコちびりそうな大スタント。観ているこちらは「やめて〜、かんべんしてよ〜」と叫びたくなるほどでした。

 今回ジャッキー・チェンは、監督・脚本・主演・武術指導・主題歌と、一人五役の大活躍ぶり。それだけに力が入ってます。僕はジャッキーの映画をそうたくさん観ているわけではありませんが、名作『プロジェクトA』に匹敵する面白さだと思いました。スタントだけでなく、最後にちゃんとカンフー対決を見せてくれるのもいい。長身の外国人と戦う場面は、ブルース・リーの『死亡遊戯』を意識した演出だと思いますが……。

 ヒロインを演じているのは、ミシェル・フェレと山本未来。山本未来は『不夜城』がぱっとしなかったけど、『39/刑法第三十九条』とこの『フー・アム・アイ』はなかなかいいぞ。案外彼女には、こうしたカラリと明るい役が合っているのかもしれません。

(原題:我是誰)


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