ユニバーサル・ソルジャー
ザ・リターン

1999/08/09 SPE試写室
ヒット作の続編だが設定を借りただけのまがい物作品。
脚本でもっとよく考えてほしい。by K. Hattori


 今から7年前、ジャン=クロード・ヴァン・ダムとドルフ・ラングレンが共演したSFアクション映画『ユニバーサル・ソルジャー』は、監督ローランド・エメリッヒと脚本ディーン・デブリンのコンビを『インデペンデンス・デイ』や『GODZILLA/ゴジラ』に導いた出世作。今回の映画はその正統な続編だが、前作ほどの迫力はなかった。これは脚本に問題があると思う。

 前作の事件から数年が経過し、ヴァン・ダム演ずるリュックは政府の秘密プロジェクトで働いていた。そのプロジェクトとは、新型のユニバーサル・ソルジャー「ユニソル2500」の開発と、経験豊富なリュックによる実地訓練だ。新しいユニソルはリュック以上の運動能力を持っているが、暴走を防ぐために脳に特殊なチップを埋め込み、コンピュータで厳重に管理されていた。だがこのプロジェクトが政治的事情で凍結されると決まったとき、意志を持ったコンピュータは自分の存在を守るため人間たちに牙をむく。武器は最新のユニソル兵士だ。

 『ユニバーサル・ソルジャー』の面白さは、ヴァン・ダムの荒唐無稽なアクションを「サイボーグ兵士だから」という理由で成り立たせてしまう部分にあった。ところが今回の続編では、主人公の能力を凌駕する新型のユニソルが多数登場し、相対的に主人公の能力は落ちている。前作ではぎくしゃくしていた身体の動きも、今ではすっかり人間らしさを取り戻しているし、プロジェクトの中心人物として穏やかな生活を送っている。今回の映画のヴァン・ダムは、強力なサイボーグ戦士ではなく、単なる人間になってしまっているのだ。彼は最新のユニソル兵士に負けるだけでなく、普通の人間にも殴られて倒れる始末。これのどこがユニバーサル・ソルジャー?

 僕の誤解だったのかもしれないが、前作のテーマは人間を改造して最強の兵士にする行為の非人間性にあったのだと思う。しかし今回の映画で、新たに別のユニソルを開発しているのはなぜなのか。しかもそこに、主人公が協力しているのはなぜなのか。この前提そのものに、僕はまったく釈然とできなかった。主人公を新機種開発プロジェクトの外側に置いておき、ことあるごとにプロジェクトに反対させておいた方が、ユニソル暴走を食い止めようとする主人公の行動に整合性が生まれると思う。

 コンピュータの反乱というテーマは『2001年宇宙の旅』からのイタダキで、劇中にはコンピュータが人間たちの会話をガラス越しに盗み聞きする場面まで同じように登場する。この映画では意志を持ったコンピュータが肉体に宿り、最強のユニソルになるというのが後半の山場。しかしこの話にするなら、この最強の敵をもっと早い段階で物語に参加させた方がいい。途中出場で途中退場では、『スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス』のダーク・モールと変わらない。

 パスワードの使い方もよくわからないし、最強ユニソルが主人公の娘を治療した理由もよくわからない。このあたりは、脚本でもっとよく詰めておいてほしかった。

(原題:UNIVERSAL SOLDIER : THE RETURN)


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