シャー・ルク・カーンのDDLJ
ラブゲット大作戦

1999/07/23 東映第1試写室
インドで4年もロングランされているという大ヒット映画。
これは傑作。インド映画好きは必見です。by K. Hattori


 昨年の東京ファンタでは何本かのインド映画が公開されたが、その中でももっとも面白く、感動的だったのがこの映画。映画祭でのタイトルは『DDLJ/花嫁は僕の胸に』でしたが、今回は主演スターを日本で売り出す意味もあって『シャー・ルク・カーンのDDLJ/ラブゲット大作戦』になった。でもこれ、長すぎて誰も覚えてくれないんじゃ逆効果だと思うけどね。タイトルはともかく、映画の中身については僕が太鼓判を押しちゃう。もっとも僕がそんなこと言わなくても、インドで4年もロングランしている大ヒット作だと言えば、それで済んでしまうことかもしれないけどね。

 『ムトゥ/踊るマハラジャ』の大ヒット以降、インド映画と言うと、泥臭さとベタなギャグと話のつながり無視の強引な展開と極彩色のミュージカルばかりが「すごい!」と語られがちでした。でもインド映画にも洗練された面白い作品はあるのです。この『DDLJ』もそんな映画の1本でしょう。話は単純で(僕に言わせるとどんな映画の話も単純になるなぁ)、卒業旅行で知り合ったイギリス育ちのインド人男女が恋に落ち、父親の郷里で親の決めた許婚と結婚するヒロインを自分の妻にすべく、主人公の男が単身インドに乗り込んで大奮闘するというもの。上映時間3時間10分の内、前半1時間35分はヨーロッパ旅行篇。後半の1時間35分は舞台をインドに移しての花嫁獲得篇になる。わかりやすい構成だ。

 大好きな場面はいくつもあるし、今回2度目の鑑賞にも関わらず、思わず涙ぐんでしまう場面もたくさんあった。僕が好きなのは、ヨーロッパ旅行から帰る直前、戯れにシムランに愛を告白したラージが、列車に乗る彼女を見送りながら「僕を振り向いたら彼女は僕を愛してる」とつぶやく場面。インドに行ってラージをあきらめようとするシムランに、彼女の母親が自分の生い立ちや、女性に生まれ育つ苦しさや辛さを語る場面も泣ける。インドに駆けつけたラージと密かな逢い引きをしているシムランに対し、妹が「私は姉さんに屋上の人と結婚してほしい」と励ましの言葉をかける場面もいい。映画ではこの屋上が非常に重要な場所になっていて、主人公たちが夫婦祭食事をする場面も素敵だったし、数十人のダンサーが歌い踊る大ミュージカルナンバーも見応えがある。

 物語そのものは「融通の利かない頑固親父が娘を嫌がる相手と無理矢理結婚させようとするが、彼女を愛する主人公が父親を説得して彼女と結婚する」だけの話。しかしこの父親も、単なる頑固親父ではない。若い頃にイギリスに渡り、そこで何とか商人として成功して故郷に錦を飾る苦労人だ。彼の故郷に対する切実な想いや、自分が故郷を棄ててきてしまったという負い目が、娘の結婚に対する過剰な期待になっているのでしょう。自分はインドを離れてイギリスで成功したのだから、イギリス育ちの娘が今度はインドで幸せになってほしいという、素朴な郷土愛であり、親心なのです。公開規模は小さいながら、この映画が正式に公開されるのは嬉しい!

(原題:Dilwale Dulhaniy Le Jayenge)


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