それいけ!アンパンマン
勇気の花がひらくとき

1999/07/20 東商ホール(試写会)
お城を抜け出したキララ姫の冒険とアンパンマンの活躍。
人気アニメの劇場版第11作目。by K. Hattori


 マスコミ試写がなかったので、公開直前の一般試写に家族そろってもぐり込んできました。今回の映画は劇場版11作目にあたるそうですが、大人も子供も楽しめる良質のアニメ映画になっています。テレビの人気アニメを劇場版にするのは『ドラえもん』が大先輩ですが、『アンパンマン』の方が少し対象年齢が低いのかな。劇場アニメでは子供を連れてきた大人をどう楽しませるかというのがポイントかもしれませんが、『ドラえもん』と『アンパンマン』はテレビ版の拡大版で大人も子供も楽しめる作品に仕上げ、『クレヨンしんちゃん』はマニアックな大人向けのギャグを多発し、『ポケットモンスター』は大人を無視して徹底した子供向けの世界を追求しているように思います。

 今回は親子試写ということで、会場には大勢の子供たちが来ていたのですが、その子供たちの何割かが最後には退屈し、泣いたり騒いだりしていたのは気になります。我が家の3歳の娘も、途中で退屈して「早く帰りたい〜」と泣きべそかいてました。最初の舞台挨拶や、ドリーミングの歌の実演では手を叩いてはしゃぎ回り、最初に上映する2本の短編『おむすびまんと夏まつり』『やきそばパンマンとバイキン西部劇』では大喜びしていた子供たちが、なぜ本編である『勇気の花がひらくとき』では退屈してしまうのだろうか。これは単に、時間が長くなって退屈してきたというものではないと思う。

 今回上映された3作品を僕が観ても、2本の短編の方が肝心の本編より面白いのです。『おむすびまんと夏まつり』は、どきんちゃんの焼き餅ぶり、こむすびまんと小梅ちゃんの淡いロマンス、ばいきんまんのイタズラに秘伝の梅干しと梅酢で対抗するというアイデアなど、見せ場が満載。『やきそばパンマンとバイキン西部劇』も、ハンバーガーキッドが登場するタイミングなどは、待ってましたと手を叩きたくなるような絶妙ぶり。この2本はいかにもアンパンマンの世界です。

 これに対して『勇気の花がひらくとき』は、おなじみのキャラクターたちの行動に対して、事件の規模が大きくなりすぎているような気がする。ばいきんまんのイタズラも、スケールが大きくなると残酷でグロテスクです。いくらマンガとはいえ、これではばいきんまんが乱暴ないたずらっ子ではなく、病的なサディストや殺人狂に見えてしまう。ばいきんまんは人気のあるキャラクターだと思うのですが、この映画のばいきんまんは、ちょっといただけません。映画化で物語がスケールアップするのは、『ドラえもん』も『しんちゃん』も同じですが、どちらもキャラクターを大事にして、キャラクターの性格まで大きく誇張することは避けている。『アンパンマン』でもそうした方針を取ってほしいのです。

 3本の映画をトータルで観れば「ああ面白かった」と言える映画だと思う。しかし、最初の短編が一番面白く、後になるに従ってつまらなくなるという状態は、なんとか改善してほしい。でないと子供が気の毒です。


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