スター・トレック
叛乱

1999/04/13 UIP試写室
新『スター・トレック』第3弾は、不老長寿の惑星が舞台。
ピカード艦長が300歳の女性に恋をする。by K. Hattori


 アメリカではテレビや映画で人気があるのに、日本では一部の熱狂的なファン以外にはさっぱり浸透しない『スター・トレック』シリーズの最新作。オリジナルのテレビ・シリーズは1960年にスタートし、ウィリアム・シャトナーやレナード・ニモイなど、テレビと同じメンバーで映画が6本作られた。その後、テレビは全面的にメンバー・チェンジした新シリーズに突入。映画の方も同じメンバーにバトンタッチして、今回の作品が3作目になる。日本では『スター・トレック』があまり人気のある作品ではないせいか、過去2作では、これがテレビ・シリーズの番外編であることを全面に出さずに公開してきた。タイトルにもそれは現れていて、新シリーズの1作目が『ジェネレーションズ』で、2作目が『ファースト・コンタクト』になっている。今回は新・シリーズでは初めて、タイトルに『スター・トレック』という大きな名前が入った。

 かく言う僕も『スター・トレック』には思い入れも知識もなく、一昨年に封切られた『ファースト・コンタクト』で初めて映画版をみたクチです。でもこの作品は世界観がきっちり出来上がっているし、各キャラクターの個性も際だっている。まったく予備知識なしに映画を観ても、そこそこは楽しめた。今回の映画も、それはまったく同じだと思う。善玉と悪玉が明確で、余計なことを考えなくてもいいのが最高です。逆に言うと話は非常にシンプルで、ひょっとしたら子供っぽいぐらい。ところがそれを、きちんとした芝居とピカピカの美術や特撮で、第一級のSFエンターテインメントにしているのです。
 今回の映画でモチーフになっているのは不老不死ですが、これをあまり真剣に考え出すと、人間とは何か、何のために人は生き、何のために死ぬのかという、かなり哲学的なテーマになってしまう。この映画は不老不死の秘密を善玉と悪玉の対立点にするだけで、それがもたらす人間社会の驚きや価値観の変化などについては、一切考慮していない。魅力的なテーマなのにこのレベルで踏みとどまったのは、ものすごく頭のいいことです。あと一歩でも不老長寿のテーマに踏み込んでいると、この物語は収拾のつかないものになってしまったことでしょう。

 映画のタイトルは『スター・トレック/叛乱』になっていますが、このタイトルはうまい。映画の導入部ではアンドロイドのデータ少佐が叛乱し、映画の中盤ではピカード艦長が連邦の命令系統に反旗を翻し、映画の終盤ではそれまで自分たちの目的を隠し続けてきたソーナ人が連邦に叛乱し、さらにソーナ人の一部がリーダーに叛乱を起こす。最初から最後まで、叛乱に次ぐ叛乱です。これだけ書くと、裏切り合いばかりが続くゴチャゴチャした映画に思われるかもしれませんが、この映画では人物たちそれぞれが反抗し叛乱し裏切る理由がきちんと描き込まれており、決してマンネリやワンパターンに陥っていない。思い切り意外な展開はどこにもありませんが、話自体はスッキリまとまっていて面白いと思います。

(原題:STAR TREK:INSURRECTION)


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