グループ魂の
でんきまむし

1999/03/29 映画美学校試写室
実在のコント・グループ“グループ魂”の初主演映画だが……。
とにかく、ぜんぜん面白くないし、笑えないよ。by K. Hattori


 僕はそもそも、“グループ魂”というコント・グループを知らない。僕が知らなくても、世間ではそれなりに知られ、人気のあるグループらしい。しかし、その初主演映画をフィルムではなく、ビデオで撮ることから、このグループがまだまだお金に苦労していることや、映画主演スターとしての集客力のなさが露呈している。僕は必ずしもビデオ撮影の映画作品を否定するわけではないが、この映画には大いに不満を感じた。コント・グループの主演作なのに、この映画は面白くない。笑えない。むしろ不快な気持ちになってくる。

 監督・脚本・編集は藤田秀幸。グループ内部での陰湿なイジメを撮り続けることが、この映画の中ではまったくギャグになっていないのが大問題。イジメをギャグにするのがけしからんなどと、野暮な批判をするつもりはない。この映画では、イジメが“ギャグになっている”のが問題なのではなく、イジメが“ギャグとして成立していない”のが問題なのです。この映画で演じられているイジメは、悪質で悪趣味な悪ふざけでしかない。サディスティックなイジメが、映画的な工夫なしにそのまま描かれるだけでは笑えない。イジメの形を残したままでも、それがグロテスクに変形して、シュールな域にまで達してしまわないと、イジメはギャグとして成立しないのです。この映画の中のイジメは、あまりにもリアルすぎる。生々しいイジメの数々を観ていても、痛々しいだけでちっとも笑えないのです。

 映画は終盤になって、ようやくシュールな展開を見せ始める。イジメられていた男がグループを脱退し、狂信的な自然保護グループに加入したり、奇妙な人生相談の男と関わったりするところは面白かった。イジメていた男が良心の呵責にさいなまれ、サドからマゾへと変貌するあたりも面白かった。さらに笑ってしまうのは、イジメられていた男を監視することになった忍者(?)が、自問自答を繰り返しながら現実から逃げようとするくだりです。これは現実をはるかに飛び越えて、ちゃんとギャグになっている。最初からこのセンスが欲しかった。

 2時間弱の映画だが、面白くなるのは最後の30分ほど。それまでは、イジメをギャグと勘違いしたアンポンタンぶりが目について、不快な思いばかりが募る映画です。この映画のイジメ描写は、人間が心の奥深くに持っている腐ったドブ水をかき出しているだけです。汚物を観客の目の前につきだしても、観客は喜ばない。汚物を使って、どんな芸を見せるかが問題なんだ。

 監督はこの映画について「落語とかって、人間のネガティブな要素を笑いにしているわけじゃないですか。業みたいな部分。そのダメさがすごいダイナミックな物語展開を生んだり、アクションを生んだり、笑いになったりすることをやりたかった」と語っています。その意図はわかるし、決して悪いことではない。でも、ネガティブなものをどう加工して笑いにするかという点で、この映画はまだ工夫の余地があると思うぞ。


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