フェニックス

1999/03/11 徳間ホール
レイ・リオッタ扮する刑事が借金返済のために強盗に変身。
主人公をもう少し年輩にした方が面白い。by K. Hattori


 レイ・リオッタ主演の犯罪スリラー。リオッタが演じているのは、アリゾナ州フェニックス警察の刑事ハリー・コリンズ。彼は仲間との結束と約束の厳守を何よりも大切にする、古風で律儀な男だ。彼の所属している刑事チームは、署内でもイタズラ好きで有名。ハリーにはギャンブル狂という顔もあり、身の回りのすべてのものを賭の対象にし、賭にまつわるさまざまなジンクスを非常に気にする。しかし賭事はすべて時の運。気がつけば、ハリーは競馬のノミ屋から1万6千ドルもの借金をしていた。相手は違法なノミ屋で、こちらは刑事。踏み倒そうと思えば、どうにでも踏み倒せる金だ。だがハリーは「借金は必ず返す」と宣言して、さらに競馬で1点買いの勝負に出る。ギャンブルの借金をギャンブルで取り返そうという悪循環。運が付いていないときは、何をしても負けるのがギャンブルだ。ハリーの借金は、あっという間に3万2千ドルにまでふくれ上がってしまう。

 映画の前半で主人公ハリーを借金でがんじがらめに縛り上げ、後半では彼が同僚刑事を引き込んで高利貸しの金庫を狙う話になる。内容はギッシリ。話はとても面白い。ただし、主人公ハリーを演じているのがレイ・リオッタだという点が、この映画の弱さになっている。主人公の頑固な律儀さや、ジンクスにこだわる古風なギャンブラーぶりは、もう少し年輩の俳優の方が説得力があったと思う。そうすることで、アンジェリカ・ヒューストンとのロマンスにも納得がいくし、同僚刑事グループの中でハリーがリーダー格になっている点もすんなりと飲み込めるようになるだろう。

 4人の刑事の内、主人公ハリーと親友マイク・ヘンショーを50がらみの年輩刑事に設定し、40代の中堅のジェイムズ・ナッターをはさんで、美人の女房を持つ刑事フレッド・シュスター(これは30前後)とチームを組ませると、主人公を取り巻く人物関係が有機的につながってきて、ドラマに厚みが出たはずだ。脚本にはそれぞれのキャラクターが細かく描かれているのに、役者が似たような年格好なので、変化に乏しくなっているのが残念。この映画ではレイ・リオッタ本人が製作者として名を連ねているため、どうしても彼が主役にならざるを得ない事情もあるのだろう。でもハリーの役をやるには、リオッタではまだ貫禄不足。彼はまだ若いので、長い年月をギャンブル一筋に生きてきて、容易にはその生き方を変えられない男には見えないのだ。

 映画のオープニングで血まみれのまま逃げるハリーを描き、そこから過去に戻ってそれまでの経緯を語る構成は悪くない。ただしこれもレイ・リオッタの貫禄不足で、物語の中で常にハリーが「負け犬」「失敗を約束されている者」に見えてしまう難点がある。このオープニングから始めるのなら、映画の前半でもっとハリーの羽振りのよさを見せておいた方がいい。威勢のいい時代があってこそ、運がつかなくなった時の凋落ぶりがコントラストの中で浮かび上がってくるのだと思う。

(原題:PHOENIX)


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