ラウンダーズ

1999/02/23 松竹試写室
マット・デイモンが賭ポーカーの若き天才を演じる青春ドラマ。
脇役陣にもう少し凄味がほしかった。by K. Hattori


 『グッド・ウィル・ハンティング』のマット・デイモンがポーカー賭博でサクセスする若者を演じた、異色の青春映画。もっとも、法律学校の優等生が賭ポーカーの世界にはまって恋人も去り、学校を中退し、ラスベガスの世界選手権を目指すという話がサクセス・ストーリーかどうかは、第三者の目から見るとはなはだ怪しい。しかし、悩みや誘惑の多い青年期の中で自分の才能を信じ、自分自身の力で運命を切り開いて行こうとする主人公の姿は爽やかで、ノリは完全に『ロッキー』型の熱血ドラマになっている。共演陣が超豪華。主人公マイクの親友役にエドワード・ノートン、映画の冒頭でいきなりマイクから3万ドルを巻き上げる凄腕の勝負師にジョン・マルコヴィッチ、マイクを見守る先輩役にジョン・タトゥーロ、法律学校の教授役にマーティン・ランドー。映画ファンならこれだけでも、この映画に一見の価値があることがわかると思う。綿密な取材をした上で再現されている、ピリピリした鉄火場の雰囲気も素晴らしい。

 ポーカーで生活費と学費を稼いでいるマイクが、高レートの賭場でいきなり全財産の3万ドルを失うところから物語がスタート。これに懲りて「二度とポーカーはやるまい」と決意したマイクだったが、高校時代の親友ワームが刑務所から出てきたことから、堅実路線に切り替えたはずの生活がおかしくなってくる。ワームはあちこちに多額の借金があり、やくざたちから返済を迫られているのだ。マイクはワームを助けるために、金持ち相手のいかさまポーカーを手伝うことになる。これがきっかけとなって、マイクはまた元の生活に逆戻り。むしろ前よりポーカーにのめり込んでいくようになる。

 話が面白いのと各キャラクターに魅力があるので、映画の最後までまったく飽きることはない。小遣い銭を稼ぎに出かけたカジノで、顔見知りのギャンブラーたちが勢揃いして観光客をカモりまくる場面は楽しい。マイクたちのレベルになると、ポーカーは博奕と言うより心理ゲームの要素が強く、素人相手なら顔色を見ただけで手の内がわかってしまうのだ。日本で言えば、麻雀みたいなものかもしれない。偶然性も確かに多少はあるけど、強い人は偶然に頼ることなく確実に勝って行く。

 もっともこの映画にも、残念な部分はある。マイクの周囲にいる賭ポーカー仲間やギャングたちがあまりにも魅力的すぎて、彼らが本来持つべき暗さや汚さがあまり感じられないことだ。マイクは法律学校と賭ポーカーという、ふたつの世界に足を突っ込んでいるわけだが、賭ポーカーの世界が面白すぎて、そこにある危険さや後ろ暗さがほとんど感じられないのだ。ジョン・マルコヴィッチ演ずるテディーKGBという男は、ロシア・マフィアを背後に持つ大物ギャンブラーというふれ込みなのだが、「彼に負けたら殺される」という危険をこの映画からは感じることができない。ワームの小悪党ぶりも、他の連中の本格的な悪党ぶりとの対比ではじめて生きてくると思うのだが……。そこが残念でたまらない。

(原題:ROUNDERS)


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