1001 Nights
ワン・サウンザンド・ワンナイツ

1999/02/22 シネカノン試写室
天野喜孝のアニメとデビッド・ニューマンのオリジナル曲で描く、
幻想的なアラビアン・ナイトの世界。by K. Hattori


 短編映画とオリジナルのクラシック音楽(「クラシック音楽」というのは音楽の形式のことなので、新曲でもクラシックと言うのです)を組み合わせた『フィルムハーモニック』の第1弾作品。これはロサンゼルス・フィルハーモニックの音楽監督エサ=ペッカ・サロネンのアイデアから生まれた連作短編映画集で、今回の『1001 Nights/ワン・サウンザンド・ワンナイツ』は、天野喜孝とデビッド・ニューマンのコラボレーション作品だ。演奏はもちろんサロネン指揮のロサンゼルス・フィルで、ナレーションはジーナ・ローランズ。監督は『ナチュラル・ボーン・キラーズ』のアニメ部分を担当したマイク・スミス。CG部分は『スワロウテイル』の金子徳明が担当している。プロデュースは園山征夫。今回は「映画」の上映だったが、昨年8月にはロサンゼルス・フィルの定期演奏会で、フィルム上映とオーケストラの演奏を組み合わせるライブ・パフォーマンスも行われたようだ。次回以降も、ジェリー・ゴールドスミスとポール・バーホーベン、ダニー・エルフマンとティム・バートンといった組み合わせで新作を作る予定だとか。

 タイトルからもわかるとおり、この映画のモチーフは「アラビアン・ナイト(千一夜物語)」だ。若い男女が鬼神や妖精の魔法によって恋に落ちるという物語を、一切台詞を使わず、アニメと音楽だけで表現している。これに一番近いのは、バレエだろうか。デビッド・ニューマンの音楽はモリス・ラベルのバレエ音楽に似ていて、天野喜孝の原画は装飾が多いクリムト風。アニメはCGあり、切り絵あり、水彩画あり、鉛筆画やパステル画ありと多種多彩だが、演出そのものに新鮮さは感じられない。オーケストラ演奏と合わせたライブ・パフォーマンスとしては面白いかもしれないが、音楽がフィルムのサウンドトラックに録音されている限り、いわゆる「短編アニメーション作品」でしかないと思う。

 物語自体に台詞はないのですが、開巻直後にジーナ・ローランズのナレーションが少しだけ流れる。今回試写で観たプリントには、この部分に字幕が入っていない。物語の主人公である「プリンス・カマール」と「プリンセス・ブドゥ」を紹介している重要な部分なので、ここにはきちんと字幕を入れてもらいたい。ひょっとしたらこのプリントを使って、どこかでライブ・パフォーマンスをやるつもりなのかな。そうすると最初のナレーションは日本人がやるだろうから、字幕が邪魔になるという判断かもしれない。でも今回は「映画」として上映するのだから、やはり字幕は必要だと思うけどな。

 この映画のコンセプトデザインと制作監修を行った天野喜孝は、もともと竜の子プロ出身でアニメ関連の仕事も多い。押井守監督と組んだ『天使のたまご』などが印象に残る。最近はゲームの仕事も多いし、イラストレーターとしても人気のある人。。映画としてはまだ実験作の域を出ていないと思うが、天野喜孝ファンの人が観れば、今回の映画もそれなりに面白いと思う

(原題:1001 Nights)


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