ペイバック

1999/02/19 有楽町朝日ホール
相棒に盗んだ金と妻を奪われた男が復讐のために立ち上がる。
メル・ギブソン主演のハードボイルド映画。by K. Hattori


 組織に属さない一匹狼の強盗ポーターは、仕事のパートナーに選んだ男に裏切られ、盗んだ金と妻を奪われた。プライドを傷つけられたうえ、生死の境をさまよう重傷を負ったポーターは、自分を裏切った男ヴァルを殺し、妻と金を取り戻すため町に舞い戻ってくる。主演のメル・ギブソンが非情なアウトローを演じて、『マッド・マックス』時代のハングリーさを取り戻しています。我々が最近見知っているギブソンと今回演じたポーターという役柄の落差がチグハグにならず、うまくキャラクターの幅や奥行きにつながっているのが見事。原作はリチャード・スタークの「悪党パーカー/人狩り」だが、この小説は今から30年以上も前に『殺しの分け前/ポイント・ブランク』として映画化されている。監督はジョン・ブアマンで、主演はリー・マービン。今回の作品はそのリメイクですが、僕は原作未読でブアマンの映画も観ていないので、今回の映画との比較はできない。

 主人公のポーターは、もともと用意周到な準備できれいな仕事をするプロの強盗だったのでしょう。危険に身をさらすような無茶はしない。目立った派手な仕事をして、町を牛耳る組織と対立関係になるようなこともしない。自分の職分を守り、その範囲の仕事で満足しているタイプです。それこそが、ポーターの強盗としての処世術だった。ところが相棒と妻に裏切られたことによって、彼の生き方は180度変わってしまう。彼は自分から奪われたものを取り戻すために、命知らずの冒険をするようになる。相棒のヴァルは、ポーターから盗んだ金を組織への借金返済に充ててしまった。金を取り戻すとしたら、組織を相手にしなくてはならない。ポーターの金は7万ドル。もとより組織を相手にする危険と引き合う金額ではない。だがポーターはその金にこだわる。わずか7万のはした金を取り戻すことが、ポーター自身のプライドを取り戻すことにつながるからです。

 面白い映画です。この手の作品では敵役の描き方が面白さの重要な部分を占めますが、ポーターを裏切ったヴァル、ヴァルを捨て石にしてでも組織の権威を守ろうとする幹部たち、ポーターをつけねらう中国マフィア、ポーターの金のおこぼれに預かろうとする悪徳警官たちなど、どの悪党たちも一癖ある連中ばかりです。ヴァルの陽気なマゾヒストぶりには笑ってしまうし、組織の幹部がまた個性的な連中ばかり。特にジェームズ・コバーン演じる中堅幹部が、なかなか憎めない男で面白かった。ポーターの金を横からかすめ取ろうとするデヴィッド・ペイマーも、図々しさだけが取り柄の小悪党を好演しています。サドの中国系コールガール、ルーシー・アレクシス・リュウも大いに笑いを取っていました。

 この映画では、主人公ポーター、デボラ・カラ・アンガー演ずるポーターの妻、マリア・ベロ扮する高級娼婦ロージーの三角関係がわかりにくいのだけが欠点。ポーターの妻はなぜ彼を裏切ったのか、そんな妻をポーターはどう思ったのかが、最後までよくわかりませんでした。

(原題:PAYBACK)


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