エバー・アフター

1999/01/13 よみうりホール
ドリュー・バリモア主演の「真説シンデレラ物語」。
王子役の俳優がミスキャストでは?by K. Hattori


 ドリュー・バリモア主演のシンデレラ・ストーリー。映画の中には「シンデレラ・ストーリー」というジャンルがあって、貧しく不幸な女性が、素敵な男性に見初められて幸せを手にする物語は、いつの時代にも好まれているようだ。『プリティ・ウーマン』などは、その典型です。しかしこの映画は、そうした「比喩」としてのシンデレラ物語ではなく、文字通り掛け値なしの「シンデレラ物語」なのです。物語は19世紀のヨーロッパではじまります。「子どもと家庭のための童話」で知られるグリム兄弟が、ある貴婦人の屋敷で16世紀に実在したというダニエル・ド・バルバラックの物語を聞かされます。彼女こそ、シンデレラのモデルとなった女性だというのです。この映画の中には、親切な魔女もカボチャの馬車も登場しません。ここで描かれているのは、自分の置かれた運命と果敢に闘い、勝利を収めた強い女性です。

 映画の中では「実話」とされていますが、もちろんこれはフィクション。シガニー・ウィーバーが主演した『スノー・ホワイト』と同じ、古典的童話の現代風解釈のひとつです。主人公のダニエル(シンデレラ)は、苦渋に耐えながらひたすら王子様が現れるのを待つ、受け身の女性ではありません。幼くして父を失い、継母や義姉たちのイジメにあいながらも、聡明で読書を愛し、権威や権力に屈服することなく、優しさと思いやりを失うことなく、自分の人生を切り開いて行く女性なのです。物語から魔法を消し去ったことで、この物語には主人公を助ける強力な支援者が新たに登場しています。それがレオナルド・ダ・ビンチというのも面白い。虚実合い混ぜながら、シンデレラを自由に解釈した面白さです。

 意地悪な継母を演じているのは、大女優アンジェリカ・ヒューストン。彼女はさる男爵の未亡人でしたが、主人公ダニエルの父と再婚して、ふたりの娘と共に田舎町に嫁いできます。ところが夫は結婚直後に急死して、彼女は身寄りもない田舎に、ひとりで取り残されてしまう。頼れる相手は血を分けた娘だけ。彼女が継子のダニエルや屋敷の使用人たちと打ち解けられないのは、彼女自身の防衛本能によるものでしょう。やがて彼女は、うだつの上がらない生活から抜け出すために、自分の長女が裕福な貴族と結婚してくれることを願うようになる。田舎娘のダニエルを使用人としてこき使い、ひたすら長女にのめり込んで行く様子には同情の余地があります。

 物語はかなり面白いし、ドリュー・バリモア演ずるダニエルのキャラクターも好ましく思えます。しかし問題なのは、王子を演じた俳優の弱さにある。ヘンリー王子を演じたダグレイ・スコットは、ジェフ・ブリッジスとバル・キルマーを足して2で割って若くしたような風貌。要するに、オバカさん顔なのです。これでは聡明なダニエルの相手として、ちょっと力不足。アメリカ人はこういうノータリン・スポーツ系のキャラクターが好きなのかもしれませんが、こんな愚かな男が相手では、主人公のダニエルまで愚かに見えてしまいます。そこが残念。

(原題:EVER AFTER)


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