リング2

1998/12/28 イマジカ第1試写室
『ループ』ではない。これはあくまでも『リング2』なのだ。
『らせん』を一度忘れて映画を観よう。by K. Hattori


 今年の年明け早々、日本中の映画ファンを恐怖で震え上がらせた『リング』の続編が登場。今回は関係者へのお披露目がメインの0号試写だったのですが、じつは僕はそれ以前に、ダビング前の粗編集版をビデオで見ていたりする。なぜそんなことが可能だったのかは、ここでは内緒。粗編集版は音も音楽も入っていないのですが、今回の0号では一応完成品と同じ体裁になって迫力倍増。僕は今回が2度目の鑑賞なので、細かな演出までしっかりとチェック。結果、大いに楽しむことができました。

 『リング2』はタイトル通り『リング』の続編です。気をつけなければならないのは、この作品が『らせん』の続編ではないということ。この映画は『リング』の設定を借りながら、『らせん』を無視して自由に物語を展開させた続編なのです。『リング』の続編として『らせん』を知っている人が『リング2』を観ると、浅川玲子と子供がなかなか死なないのでまごつきます。高野舞は安藤満男に出会わないし、テレビ局のディレクターが浅川の取材メモを見てリングウィルスに感染する事件もない。僕はこの映画が『リング』と『らせん』の中間を埋める物語だと誤解していたので、最初はすごく戸惑った。今回の試写では、さすがに最初から覚悟して観ていたので、そうしたまごつきや戸惑いはなかったけど……。

 前作『リング』は紛れもない傑作なので、続編の『リング2』がそれをしのぐことは難しい。しかし、それなりにがんばって、鳥肌の立つような恐怖を演出しています。高野舞が自分の部屋で女の手の幻影を見る場面や、伊豆大島の旅館に現れる貞子親子の亡霊、井戸の底から貞子がじりじりと這い上がってくる場面などは、何度観ても恐い。復顔した貞子の頭部を写真撮影する際、ストロボ光に恨めしげな人間の顔が浮かび上がるところは芸が細かい。撮影済みのVTRが消去できないというアイデアは、単純な不思議が恐怖につながる面白さです。

 前作『リング』に比べて弱いのは、主人公である高野舞が行動する動機でしょう。彼女は恋人であった高山竜司の死因を探るために、呪いのビデオテープや浅川玲子に近づいて行く。しかし『リング』が「別れた夫婦が協力し合って子供を守る」という力強いテーマを持っていただけに、高野舞の行動がいかにも気まぐれに見えるのです。『リング2』をもっと面白くするには、きっかけはどうあれ、ヒロインである高野舞が謎の究明から逃げ出せなくなる合理的な理由付けが必要だったと思う。

 高野舞は高山竜司をはさんで浅川玲子とは三角関係の間柄になるわけですが、この映画からはそうした男女間のドラマを感じさせる匂いがない。それでありながら、最後は高山竜司が再登場して我が子を助けようとするからチグハグな結末になってしまう。精神病院の描写がヘンだとか、ヘンテコな精神科医が出てきて笑っちゃうと言う以前に、主人公たちのキャラクターにもう少しふくらみがほしかった。高野舞と高山竜司のラブストーリーにする方法も、絶対にあったはずなんだけどな……。


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