奥サマは魔女

1998/11/20 GAGA試写室
ヴァネッサ・パラディが可愛い魔女を演じるコメディ映画。
同名テレビシリーズとは関係なし。by K. Hattori


 '60年代から'70年代にかけてアメリカで放送され、日本でも大人気だったエリザベス・モンゴメリー主演のテレビシリーズ「奥さまは魔女」。これをハリウッドで映画化するらしい、という話は前からありましたが、この映画はそれとはまったく関係のない作品です。同じタイトルの作品としては、1944年にルネ・クレールがアメリカで撮った『奥様は魔女』という作品もありますが、それとこれとも無関係。要するに、この映画は単にタイトルが紛らわしいだけの作品なのです。ちなみにテレビシリーズの原題は『Bewitched』で、ルネ・クレールの映画は『I Married a Witch』なのですが……。

 この映画はタイトル以上に、内容が変な映画です。主人公の魔女モーガンを演じているのがヴァネッサ・パラディ、その従兄弟の魔法使いモロクを演じているのがジャン・レノ、モーガンの祖母エグランティーヌを演じているのがジャンヌ・モロー、監督・脚本のルネ・マンゾール以下、スタッフもキャストもまるっきりのフランス映画なのですが、どういうわけか台詞は全部英語。モーガンたちはヨーロッパの魔女のはずなのに、モーガンの息子の名前はアーサーで、家にいる老魔法使いの名前はマーリンと、アーサー王伝説に登場する人物たちの名前が使われている。マーリンはアーサー王伝説に登場する有名な魔法使いで、モーガンという名前は魔女モルガン・ル・フェイから取られているのでしょう。

 物語の方もかなりデタラメ。息子アーサーがモロクの後継者として悪の道に進まぬよう、モーガンやエグランティーヌたちはアーサーを普通の人間にする儀式を行おうとする。それに必要なのが、アーサーと同じ誕生日の代理父。モロクはモーガンたちのたくらみを知って、代理父候補を次々に殺してゆく。一方よい魔女たちはアメリカ人発明家マイケルに白羽の矢を立て、モーガンが彼を誘惑して領地に連れてくることに成功する。儀式の生け贄として使い捨てにされるはずの代理父。ところがなんと、モーガンがマイケルに本当に恋をしてしまう。

 物語はモーガンとマイケルの恋に、モロクを加えた三角関係というシンプルなものになるはずなのに、なぜか混乱してポイントが絞れなくなっている。そもそもアーサーの本当の父親が誰なのかがすごく気になるし、モーガンとマイケルの恋が惚れ薬による幻覚から本物に変わる課程に説得力がまったくない。モーガンとモロクの直接対決がクライマックスに用意されていないという、構成上の欠点もある。モーガンはアーサーを人間にすることとマイケルへの愛に揺れ動き、モロクはアーサーを人間にする儀式の阻止とアーサーの誘拐とモーガンに自分の子供を産ませることの間で揺れるなど、各人物の目的がはっきりしていないのも物語を弱くしてしまった。マイケルが天才発明家だという設定も、効果的に生かせていないし、最後のオチもまったくパンチが効いていない。特撮などにお金はかけているようだが、脚本の腰が据わっていないために、映画全体が腑抜けになっている。

(原題:UN AMOUR DE SORCIERE)


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