モスラ3
キングギドラ来襲

1998/11/16 東宝第1試写室
最強の敵キングギドラの登場で、モスラは最大のピンチを迎える。
この内容なら大人も観て退屈しないだろう。by K. Hattori


 一昨年の『モスラ』から始まった、新『モスラ』シリーズ3部作の完結篇。第2作『モスラ2/海底の大決戦』がひどく子供だましの内容だったので、正直言ってこのシリーズにはまったく期待していなかったのだが、今回の映画はそれより数段面白い映画になっている。大人の僕が馬鹿にしながら観ても、結構ワクワクドキドキしてしまった。モスラと戦うのが強敵キングギドラだということもあるが、それ以上に、今回は脚本がよくまとまっていると思う。もちろん前作同様、子供にこびた変なところもあるのだが、割合としては小さいもので、無視しようとすれば無視できるレベル。エリアス3姉妹の葛藤と和解、タイムトラベルを使ったモスラの戦いをからめて、最初から最後まで楽しめるエンターテインメント作品に仕上がっていると思う。

 今回の映画では、平成『ガメラ』シリーズを大いに意識したであろう特撮シーンに、まずは注目してほしい。人間の視点からの仰角カットと、怪獣の視点からの鳥瞰カットを切り替えながら、怪獣のスケール感を出すことに成功している。いくつかの場面で、スケールにバラツキがあったり、突然ぬいぐるみっぽく見えてしまう場面もあるのだが、怪獣同士の戦いを怪獣のバストポジションから撮るような中途半端さは大幅に減っている。ビルの内部や建物の影から怪獣を見上げるようなショットは、露骨に『ガメラ』シリーズを真似しているのだが、こうした真似は大いにやってほしい。ただし、『ガメラ』シリーズの緻密なミニチュア・ワークに比べると、『モスラ3』は容易にデジタル合成に頼って、かえって安っぽく見える場面もある。エリアス3姉妹と人間を合成するシーンなどではデジタル合成の威力が発揮されて驚異的な効果を生みだしているのだが、怪獣に関してはできるだけミニチュアを使ってほしい。また今回は舞台が白亜紀になる場面があるのだが、画面に恐竜が登場すると、どうしても『ジュラシック・パーク』と比べてしまう。怪獣と恐竜は比較できなくても、恐竜同士は比べてしまうため、どうしてもショボさが目立つのは残念。

 この映画のクライマックスは、エリアス3姉妹のひとりモルが命を落とし、モスラも倒された後、姉妹の生き残りベルベラとロラがフェアリーに乗ってキングギドラに戦いを挑む場面だろう。「私たちは似てないけど、それでよかったんだよ」「優しさは弱さじゃない。優しさに勇気が加われば、何よりも強くなれる」という台詞は泣ける。映画の序盤では「恐怖の大王が宇宙から来る」とか、「給食で嫌いな物を我慢して食べるのは、自分を騙していることになる」などの台詞で大いにガッカリさせてくれたが、このクライマックスには燃えた。思わず心の中で「モスラがんばれ!」と声援を送ってしまった。

 欠点もたくさんある映画だし、無条件に「いい映画だ」とは決して言えない映画ですが、子供向き映画としての最低線は確保している内容だと思う。冬休みに子供と映画館に行った大人も、まずまず楽しめるはずです。


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