スモール・ソルジャーズ

1998/11/10 UIP試写室
高性能マイクロ・チップを搭載したアクション・フィギュアが大暴れ。
ジョー・ダンテが監督した現代版『グレムリン』。by K. Hattori


 軍事用のマイクロ・チップを搭載したアクション・フィギュアが、人間相手に大立ち回りを演じるファンタジー映画。監督は『グレムリン』のジョー・ダンテで、映画の内容も基本的には『グレムリン』と同じ。今回は不思議なペットが大暴れするのではなく、プラスチック製のフィギュアが大暴れする点だけが新しい。現代は「バーチャル・ペット」の時代だからなぁ……。

 軍事産業界の花形企業グロボテック社がオモチャ部門に進出し、超ハイテク・フィギュア「スモール・ソルジャーズ」を発売する。フィギュアはふたつのグループに分けられ、一方は醜悪なモンスター軍団「ゴーゴナイト」、もう一方はそれを全滅させる任務を帯びた精鋭部隊「コマンドー・エリート」だ。これらは永久電池と高性能モーター、それに学習機能付きのマイクロ・チップを埋め込んだ動く人形たち。ところがマイクロ・チップが高性能すぎて、人形たちは自意識を持った人工生命体へと進化していた。とはいえそこは機械の悲しいところで、彼らは最初にプログラミングされた行動にひたすら執着する。ゴーゴナイトはコマンドー・エリートの攻撃から身をかわしながら故郷ゴーゴンを目指し、コマンドー・エリートたちはひたすらゴーゴナイトの全滅に向けて猪突猛進する。途中の障害物はすべて排除。たとえそれが人間であろうと、障害物は絶対に排除だ!

 『グレムリン』では善良なギズモと悪いグレムリンが同じ生物の2形態として描かれていましたが、この『スモール・ソルジャーズ』でも、温厚なゴーゴナイトと凶暴なコマンドー・エリートを分けているのは、同じマイクロ・チップに移植された2種類のプログラムという設定になっている。『グレムリン』では主人子の少年が約束を忘れたことからグレムリンが生まれるが、『スモール・ソルジャーズ』でも少年は父親に黙ってフィギュアを買い求める。主人公の少年が、事件を通してクラスメートの少女と仲良くなるのまで同じ。ふたつの映画は、一卵性双生児のように似ているのです。

 この映画の面白さは、コマンドー・エリートたちの戦いぶりが、軍隊アクション映画のグロテスクなパロディになっている部分。同じドリーム・ワークス製作で『プライベート・ライアン』『アンツ』『スモール・ソルジャーズ』と観てくると、彼らが「戦争」というものをどう捉えているかが見えてくるようで面白いぞ。この映画の中では、コマンドー・エリートたちが戦闘の中で発するありとあらゆる美辞麗句は空虚な絵空事であり、勇猛果敢な戦いぶりも滑稽なサーカスでしかない。死んで行く仲間に対してリーダーが「お前は勇敢だった。お前は死んでも、その記憶は私たちの中に永久に残るだろう」と涙ながらに演説しても、これはギャグなのです。

 主人公のガールフレンドを演じているのは、『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』のキルスティン・ダンスト。子役出身の彼女も、そろそろ難しい年頃に突入してきたぞ。僕は好きです。がんばって大人の女優になれ。

(原題:SMALL SOLDIERS)


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