ラッキーロードストーン

1998/10/20 ユニジャパン試写室
「THE 虎舞竜」の高橋ジョージが作ったワンマンショー映画。
ひどい映画ですが、ファンの方はどうぞ。by K. Hattori


 久しぶりにすごい映画を観てしまった。監督・原案・脚本・編集・音楽・主演を、人気バンド「THE 虎舞竜」の高橋ジョージが担当したワンマンショー映画。内容も強烈。独りよがりな物語と紋切り型の映像や台詞の連続に、観ている途中で何度も気が遠くなりそうになってしまった。上映時間は80分だが、これが非常に長く感じる。映画が終わった瞬間の清々しい気分は、「これでようやく映画から逃げられる」という開放感に他ならない。この映画のすごさはそれだけではない。正式公開は来年からなのだが、「THE 虎舞竜」はこの映画とライブを組み合わせた「シネマ&ライブ形式」による全国ツアーを10月から行う予定で、そこではラストシーンをカットした映画が上映されるそうです。ラストシーン観たさに、この映画を2度観る観客がいるのか。まあ、バンドのファンなら観るのかもね……。

 高橋ジョージが演じているのは、若い頃の荒れた生活がたたって、しばらく刑務所に入っていた四十男・鏡研一。「刑務所から出たら、一緒に人生をやり直そう」と誓い合った恋人は別の男と結婚し、残ったのは愛車ハーレーダビッドソンのみ。恋人に復讐しようとバイクを転がしていた研一は、ヒッチハイクする帰国子女の如月悠夏をひろう。彼女は幼い頃に別れたきりの母親を捜して、アメリカから日本に帰ってきていたのだ。悠夏を演じているのは、『友情/Friendship』でスキンヘッドを披露した三船美佳。今回は髪の毛を金髪にしての出演。研一の元恋人を演じるのは田中美奈子だ。

 目的地は金沢なのだが、出発点がどこなんだかさっぱりわからない。出てくる風景はどこかの山道みたいなところばかりで、ロードムービーに不可欠な移動感がまったくない。悠夏が予知夢を見てそれが現実に反映して行くという構成も、最初はすごくわかりにくい。僕はなぜ彼らが何度も同じコンビニに入るのか、理解に苦しんでしまった。ここは結局、悠夏が台詞で説明してしまう。

 この映画で笑っちゃうのは、主人公がインポ野郎だということ。悠夏と出会って互いに好意を持っているにもかかわらず、主人公の研一は彼女に手を出そうとしない。彼女の方はそれを期待しているそぶりも見せるのですが(途中でコンドームも買うし)、研一は何かにおびえるかのように、決して彼女と関係を持とうとはしないのです。最愛の恋人に振られたという精神的なショックが、彼の男性としての自信をうち砕いてしまった。あるいは、刑務所で同房の男にオカマでも掘られたのだろうか。「日本人はケツの穴が小さいよな」と言ったときの、彼の引きつった笑いが何かを物語っている……。さらに、彼が持っているピストルがオモチャの銃だということも、彼の性的不能を象徴しているようだ。

 この映画最大の恐怖は、ヒロインを演じた三船美佳の実母である喜多川美佳(つまり三船敏郎の元愛人)がヒロインの母親役で登場し、エンドクレジットに「三船敏郎氏に捧ぐ」という献辞が出ること。なんかすげえ!


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