ロスト・イン・スペース

1998/10/12 日本ヘラルド映画試写室
人気TVシリーズ「宇宙家族ロビンソン」を現代風にアレンジ。
ベタベタのホームドラマが恥ずかしい。by K. Hattori


 '60年代に作られたTVシリーズ「宇宙家族ロビンソン」を映画用にリメイクした作品。資源の枯渇で移住先を探している人類が、先発隊として宇宙に送り出したロビンソン一家の活躍を描くスペースオペラだ。特撮はすごい。でもドラマ部分は物足りない。映画は仕事人間の父親のせいでバラバラになりかけていたロビンソン一家が、宇宙船の中で再び家族の絆を取り戻して行くホームドラマになっている。「地球の運命は我らの手に」「宇宙で迷子になってさあ大変」など、本来物語を進めてゆくはずの設定は脇に追いやられ、ひたすら「お父さん、僕を愛して!」「あの子は父親に愛されたいのよ」「でも仕事があるんだ」「仕事と子供とどっちが大事なの」みたいな夫婦と子供の会話を聞かされる映画です。こんなベタベタのホームドラマが描きたいなら、別に大金をかけて豪華なSFX映像を作る必要ない。この映画はテーマの比重を間違ってます。中心になるのはあくまでも「任務を帯びた宇宙旅行」や「それを妨害しようとするドクター・スミスとの対決」にあるべきで、ホームドラマ要素は全体の味付け、脇のエピソードで構わない。

 映画の冒頭にある、ハイパーゲート近辺での宇宙戦闘シーンは、なんだか久しぶりに宇宙空間でのドッグファイトを見たような気がする。これは「つかみ」としては満点です。ただその後ロビンソン一家の方に話が振られると、映画のテンポは突如としてスローダウンしてしまう。宇宙船打ち上げシーンで少し興奮しますが、あとはダラダラした印象の映画です。CGをふんだんに使った特撮のクオリティは高いのですが、どの絵も今までどこかの映画で見たことがあるような場面の縮小再生産。宇宙船打ち上げシーンは『アポロ13』の迫力に負けているし、中盤のクライマックスになる宇宙グモ狩りの場面は『スターシップ・トゥルーパーズ』に到底及ばないし、最後のモンスター出現シーンも『メン・イン・ブラック』にはかなわない。ドームの中に入って行くシーンは『スター・ゲイト』だしなぁ……。

 しかしこの映画が何より困ってしまうのは、話が途中で終わってしまうことでしょう。製作者側としては、同じメンバーで『ロスト・イン・スペース2/ドクター・スミスの逆襲』や『ロスト・イン・スペース3/地球への帰還』(どれも勝手に考えたタイトル)を作ってガッポリ儲けたいのかもしれませんが、宇宙に出た家族が迷子のまま終わってしまうのはやはり困る。それに現在のハリウッド事情を考えると、続編を作ったときに、同じメンバーが集まらない危険性もあるしね。『バック・トゥ・ザ・フューチャー』は主役が2人だから、続編が作りやすかった。それでも途中で俳優が交代している。『ロスト・イン・スペース』の続編を作る場合、ロビンソン一家5人と、ドクター・スミス、パイロットのダン少佐まで、全員が勢揃いできるんだろうか。早く作らないと子役が大きくなってしまうし……。続編を作るたびに、家族構成がちょっとずつ違うのは嫌だなぁ。

(原題:LOST IN SPACE)


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