トップレス

1998/10/08 ユニジャパン試写室
ニュージーランドのテレビドラマから生まれた青春映画。
エピソード盛りだくさんで面白いよ。by K. Hattori


 1話4分・全41話という変則フォーマットで放送されていた、ニュージーランドの人気テレビドラマを長編映画にしたものらしい。スタッフや出演者はテレビシリーズとほぼ同じ。テレビ用に撮影したフィルムを、映画で使い回している部分もあるらしい。20代半ばの若者たちが多数登場し、それぞれの夢や恋や結婚や友情が次々に描き出される集団劇。ニュージーランド版のトレンディ・ドラマみたいなものでしょうか。

 望まぬ妊娠をしながら、中絶するタイミングを逃して子供を産むはめになってしまったリズは、恋人のジェフに本命の彼女がいたことを知って彼と別れる。悪いことは重なるもので、リズは会社もクビになってしまう。リズがひとりで子供を産もうとしていることを知って、お腹の子供の父親でもある昔の恋人ニールが現れよりを戻そうと提案するが、完全にニールへの愛がさめているリズは気乗りがしない。そうこうしている内に、友だちのアントが書いた脚本が映画化されて酷評されたり、親友のプルーがマオリの青年マイクが結婚するなど、いろいろな事件が起きる。事件が起きようが起きまいが、リズのお腹はどんどん大きくなってゆく……。

 『トップレス』というタイトルから、エロチックでセクシーな映画を期待すると大いに裏切られること請け合い。これは登場人物のひとりアントが書いた脚本「トップレスの女たちが彼女らの人生を語る」から取ったタイトルで、できた映画はトップレスの中年女たちが次々登場してはインタビューに答えるという奇怪なシロモノ。このアントという男は時折パラノイアの発作を起こす人物で、最後はとんでもないコトをしでかしてくれます。

 原作のテレビドラマがどんな構成になっていたのかはわかりませんが、映画は妊娠したリズを中心にして、横から友人たちのエピソードをくっつける形になっている。リズ役を演じたダニエル・コーマックの妊婦姿は特殊メイクではなく、実際に当時妊娠中だった彼女をそのまま撮影したもの。彼女のお腹がだんだん大きくなるのに合わせて、撮影は少しずつ進められたそうです。最後の方は、赤ん坊が生まれるのが早いか、撮影が終わるのが早いかで、現場はスリル満点だっただろうなぁ……。

 特に大きな欠点のない楽しい映画です。登場する俳優たちにまったく馴染みがないのは欠点と言えば欠点ですが、役柄に先入観を持たずに素直に観られる長所とも言えるはずです。ニュージーランドの青春映画が日本に輸入されることは珍しいし、彼の国は観光地として日本でも人気があるので、興味のある人はぜひ観てください。

 それにしても、この手の集団劇が日本映画にほとんどないのはなぜなんでしょう。アメリカでは青春映画のひとつのスタイルとして、わりと普通に見られるものなんですが……。邦画だと『ベル・エポック』が少しそんな感じでしたが、これはぜんぜんお客が入らなかったらしい。日本と海外とでは、映画に求めるものが違うんだろうか。開拓しがいのあるジャンルだと思うんだけど。

(原題:Topless Women Talk About Their Lives)


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