ハードメン

1998/09/24 ユニジャパン試写室
ギャング生活から足を洗おうとする男の命を仲間たちが狙う。
主人公たちの面構えには迫力があるぞ。by K. Hattori


 イギリス製のギャング映画。3人組の若いギャングのリーダー格であるトーンは、以前付き合っていた恋人が自分の子供を産んで町に戻って来たと知って、突然堅気になることを決意する。ところがボスはそれを認めず、残ったベアとスピードに、トーンを殺すように命じる。期限は翌朝9時。10年以上トーンとつるんでいるふたりは、当然そんな命令に従いたくない。でもトーンを殺さなければ、自分たちがボスに殺されてしまう。ベアとスピードはトーンへの死刑宣告を本人に告げることもできないまま、トーンと一緒に刻限ぎりぎりまで夜の街を徘徊する。「最後の夜をせめて楽しく過ごさせてやろう」という言葉は単なる言い訳。ふたりには、トーンを殺す勇気がないのだ。タイムリミットまでの時間は、むなしく過ぎて行ってしまう……。

 登場人物は3人。場所は夜中から明け方までの街の中。雑多なエピソードが数珠つなぎになる構成だが、物語が進むに従って、タイムリミットまでの緊張感が否応なしに高まって行く仕掛けになっている。一度こうと決めたらテコでも動かないトーンの性格や、トーンに友情を感じながらもボスには逆らえないベアの人物像、コカインや安定剤を手放さず、仲間の中ではもっとも凶暴なスピード。主人公たち3人のキャラクターが立っているので、彼らが様々な事件やエピソードを縦断していっても、映画の雰囲気が大きく変わることはない。3人の中ではやはり、トーンの存在が非常に大きい。演じているヴィンセント・リーガンのあごには大きな傷跡があって、それがトーンのキャラクター作りに役立っていると思う。これは最初メイクかとも思ったんですが、どうやらもともとリーガンのあごにあったものらしい。

 主役である3人のギャングたちを演じた俳優は、どれも日本ではほとんど顔が知られていない人たちばかり。トーン役のヴィンセント・リーガンがじつにいい面構えで、ギャング生活にピリオドを打つと宣言する良識を見せながらも、仲間の暴力沙汰や殺人には顔色をまったく変えないキャラクターを好演している。ベア役のロス・ボートマンも、友情と命令の板挟みになる男をうまく演じていた。ボス役の「マッド」フランキー・ブレイザーは本物の元ギャングだそうで、少ない登場シーンながら強烈な印象を残します。70過ぎのジイちゃんなんだけど、生命力旺盛でまだ当分死にそうにないですね。

 かなり過激な暴力シーンが登場する映画なので、それが気になる人もいると思う。映画的にスタイリッシュにまとめようとする気持ちは伝わってくるけれど、例えばジョン・ウーのようにそれが「芸」にまで昇華されてはいない。やっているのは単純なハイスピード撮影。このあたりは、経験を積む必要があるでしょう。ジョン・ウーだって、最初は下手くそだったんだからね。それより、ガン・アクションに気になるところがある。オートマチック拳銃の場合、弾が入っていなければスライドが下がりっぱなしになって、すぐにわかるんだけどね……。

(原題:hard men)


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