ボーン・ダディ

1998/09/21 ユニジャパン試写室
被害者の骨を送りつけてくる犯人と、元検死局長の対決。
ルトガー・ハウアー主演のサイコ・スリラー。by K. Hattori


 タイトルの『ボーン・ダディ』とは、主人公ウィリアム(ビル)・パーマーが書いた小説のタイトル。連続猟奇殺人事件の内容は、彼自身がシカゴ検死局長時代に遭遇した「ボーン・ダディ事件」をモデルにしている。誘拐された被害者の骨だけが送りつけられ、死体は未発見というこの事件は、犯人不明のまま迷宮入りしている。事件はこの7年間で、1件も再発していなかった。ところが、本が出版されたことが犯人を刺激して、新たな犯行が始まった。今回の被害者は、作者ビルのエージェントだ。犯人は出版された本に怒っている。パーティーの荷物として送られてきた骨には、どれも生体反応があった。哀れな被害者は、生きたまま骨抜きにされたのだ。犯人の行動を熟知したビルは、臨時のアドバイザーとして捜査に加わることになった……。

 『ブレード・ランナー』のロイ・バッティ役として知られる、ルトガー・ハウアー主演のサイコ・サスペンス映画だ。彼も今ではすっかり年をとって、今回は何と、孫がふたりいるお爺ちゃん役だ。もっともこの主人公は、枯れきって物分りの良くなった老人ではない。身体の中からエネルギーが満ち溢れ、警察や犯人とも強気で交渉できるタフな男なのだ。年をとってシワだらけの顔になったとはいえ、表情の中に、時折ロイ・バッティの面影が見える。ガラス玉のような碧眼が以前は気になりましたが、今は逆にそれがチャームポイントになってます。

 猟奇殺人をテーマにした映画は今までにもたくさんありましたが、死体そのものではなく、骨だけを送りつけてくる犯人というのがユニークで、しかも恐い。医療知識を身につけた犯人は、人質に麻酔もかけないまま肉を切り裂き、鋭利な刃物で骨をほじくり出す。骨を抜き取られた手足は支えを失って、脱ぎ捨てられた怪獣の着ぐるみのようにぐったりしてしまいます。主人公が元検死医だったという設定も面白く、ベッドの上に残されていたわずか1本の骨から、それが左手中指の骨だと一瞬で見破る場面などは、優れたキャラクターの描写だと思いました。主人公を人格高潔なスーパーマンではなく、家族に冷たく、一部の部下からは憎まれ、警察でも評判の悪い、欠点だらけの人間として描いているのも面白い。

 謎解き云々はさておいて、映画としては少し残念な部分もある。例えば、ビル・パーマーのお目付け役としてコンビを組むことになる女刑事の描写が浅く、異色のバディ・ムービーとしては大いに物足りないし、ビルと息子の確執、元妻との関係なども、もっと明確に描いたほうが物語に勢いがついたと思う。息子の自宅に骨が送りつけられる描写は、とっさにそこが誰の家だか、僕にはわからなかったもんね。孫たちに手を振る場面があったけど、その前にパーティーのシーンで息子の嫁が少し顔を出している程度なので、両者の関係がわかりにくい。あそこは少し、台詞で補うべきでしょう。中盤まではすごく面白かったのに、最後は普通のアクション映画になったのも惜しい。これはB級サスペンス映画の宿命かな。

(原題:BONE DADDY)


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