パルムの僧院

1998/09/09 メディアボックス試写室
スタンダールの小説をジェラール・フィリップ主演で映画化。
女たちがとにかく美しい。1947年製作。by K. Hattori


 スタンダールの同名小説を、ジェラール・フィリップ主演で映画化した1947年の作品。19世紀初頭のイタリアを舞台に、主人公ファブリスの冒険と、彼に思いを寄せる女たちを描いた活劇映画だ。11月の「ジェラール・フィリップ映画祭II」ではフィルムで上映されるとのことだったが、今回の試写ではフィルムが間に合わず、ビデオとプロジェクターを使っての上映となった。上映時間は2時間47分。コントラストのない「ネムイ」画面を観ているうちに、こちらまで眠くなってきてしまった。きちんとテレシネをすれば、もっとシャープな画像になるはずなんですが、たぶん古いビデオなのでしょう。字幕も所々欠けていて、上映環境としてはあまりよいものではありません。これは本来の意味での「試写会」とは言えないと思うぞ。でもこんな機会でもない限り、この手の映画を観ることもないけどね。

 勉強中のナポリから久しぶりに故郷パルムに帰ってきた主人公ファブリスは、育ての親であるジーナ叔母に熱愛される。しかしハンサムなファブリスは、女性がらみのトラブルから男を刺殺。ジーナに思いを寄せる国王はファブリスに禁固20年の刑を与えて人質代わりにし、自分の好意に応えてくれればファブリスに恩赦を与えるとジーナを口説きにかかる。いっぽう獄中のファブリスは、刑務所長の娘クレリアと窓越しの恋に落ちる。ジーナはクレリアと協力して、毒殺される寸前にファブリスを脱獄させるが、この責任を問われて父親は罷免。聖母マリアに願かけしていたクレリアも、ファブリスのもとを去って豪商のもとへと嫁ぐことになる。ファブリスはクレリアの真意をただすべく、国王一派が待ちうけるパルムに引き返して再び逮捕されてしまう……。

 物語だけを追うと、主人公のファブリスは迷惑な男。芸人の男を殺した一件も、相手はゲンコツ、こっちはナイフでグサ!じゃ、どう考えたって過剰防衛でしょう。脱獄の件ではクレリアに迷惑をかけているし、ジーナの制止も聞かずにパルムに戻って逮捕されたときは、ジーナが国王の前に体を投げ出してファブリスを釈放させている。別の男と結婚しているクレリアに、何度も言い寄るのも往生際が悪い。でもこれは物語なので、こうしたドタバタがあった結果として、登場人物たち全員が、落ち着くべきところに落ち着いてくれます。結果よければすべてよし。それにこの映画では、ジェラール・フィリップのキャラクターが、ファブリスの身勝手さをある程度合理的に解消してしまう。「あの男だからしょうがない」「彼のためになら一肌脱ぎましょう!」という周辺の人たちの気持が、無理なく飲みこめるのです。これは脚本の弱い部分を、俳優で補っているいい例だと思う。

 年上の女性の魅力を振り撒くジーナと、若い乙女クレリアがどちらも美しい。演じているのは、マリア・カザレスとルネ・フォール。ふたりの顔がクローズアップになるシーンは、背筋がぞくぞくします。恋する女のひたむきな姿は、男も女も酔わせることでしょう。

(原題:La Chartreuse de Parme)


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