私の愛情の対象

1998/08/19 20世紀フォックス試写室
ゲイの青年とルームメイトの女性の友情と恋の顛末。
恋や結婚について考えさせる映画。by K. Hattori


 ゲイの青年に恋した女性の物語。監督は『英国万歳!』『クルーシブル』のニコラス・ハイトナー。過去の2作はいずれも戯曲の映画化で、舞台演出家出身のハイトナー監督にとってはかねてより馴染みの素材。今回はスティーブン・マコーリーの小説が原作ということで、初めて舞台作品から離れての映画演出。原作を脚色したのは、劇作家のウェンディ・ワッサーステイン。ゲイの青年の視点から描かれていた原作を、ヒロインの立場で見た映画に作りなおしたのだそうです。主人公ニーナを演じているのはジェニファー・アニトン。ゲイ青年のジョージを演じたのはポール・ラッド。どちらもまだ大スターの地位には遠いが、芸達者でフレッシュな俳優たち。アラン・アルダやアリソン・ジャニー、『英国万歳!』でもハイトナー監督と組んだナイジェル・ホーソーンなどのベテラン俳優たちがしっかり脇を固めています。

 ニューヨークでソーシャルワーカーをしているニーナは、パーティーで知り合ったゲイの青年ジョージが恋人に振られて行き場をなくしているの同情し、自分のルームメイトとして同居生活をすることにします。彼女にはヴィンスという恋人がいるのですが、しきりに同居や結婚を迫ってくる彼に対して、ニーナはどうしても同居生活に踏み切れない思いがある。ヴィンスはニーナが自分以外の男性と同居し始めたのが面白くない。たとえジョージがゲイであったとしても、面白くないものは面白くないのです。ニーナとジョージはすっかり意気統合し、ヴィンスをそっちのけで、一緒にダンスを習いに行ったり、映画を観たり、食事をしたりの楽しい毎日。ふたりはお互いを大切なパートナーとして意識し始めるのだが、やがてニーナが妊娠していることがわかり……。

 ゲイの男性とストレートの女性が同居して友情を深め合う物語ですが、この逆に、ゲイの女性とストレートの女性が同居する『スリー・オブ・ハーツ』という映画があったことを思い出していました。どちらもゲイの問題を扱っているものの、中身はピュアなラブストーリーなのです。僕自身はゲイではないから、ゲイが登場する映画を特別視するいわれはないし、「ゲイだから○○」という映画にも興味がない。僕は同性愛であれ異性愛であれ、映画の中の登場人物の気持に感情移入できる部分が用意されている映画が好きなのです。

 この映画では、ニーナの部屋に越してきたばかりのジョージが、別れたばかりの恋人のことを思い出して、窓辺で泣きながらアイスクリームを食べるシーンや、自分がパトロンをしている若い男が去って行くのを、寂しそうな顔で見送るナイジェル・ホーソーンの姿に共感してしまった。人を大好きになる喜びやときめき、大好きな人に去られてしまう辛さは、男も女も、異性愛も同性愛も関係ないと思うんだよね。

 僕はミュージカルファンなので、テーマ曲が『雨に唄えば』の「You Were Meant For Me」だったことにニヤリ。エンドクレジットでは、スティングが歌ってます。

(原題:THE OBJECT OF MY AFFECTION)


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