ノック・オフ

1998/08/10 GAGA試写室
ジャン=クロード・ヴァン・ダムとツイ・ハークが再び手を組んだ。
今回は香港のスタッフを使った香港映画だ。by K. Hattori


 ハリウッドに乗り込んで『ダブルチーム』を監督したものの、あまりの勝手の違いにうんざりし、思うように仕事が出来なかったツイ・ハークは、「俺にはハリウッドの製作スタイルは性にあわん。今度は香港にアメリカのキャストを呼んで映画を作ろう」と思ったのでしょうか。新作『ノック・オフ』は『ダブルチーム』と同じジャン=クロード・ヴァン・ダム主演のアクション映画でありながら、舞台は香港だし、話の筋立てもアクションの組み立ても、まるっきり香港映画になってます。ハリウッドから招かれたのは、ヴァン・ダムの他に、ロブ・シュナイダー、レラ・ローコン、ポール・ソフヴィーノなど。これに香港からマイケル・ウォンとカルメン・リーが加わりますが、ふたりは完全にゲスト扱い。カルメン・リーはもっと活躍するかと思って楽しみにしていたのに、後半になると姿を消してしまいました。残念。

 脚本は『ダイ・ハード』シリーズの共同脚本家として知られるスティーブン・E・デ・スーザ。ロシアから持ちこまれた超小型高性能爆弾が、香港名産の偽ブランド商品に埋め込まれ、世界中に運び出されようとしている。それを阻止しようとするCIAの捜査官と香港在住の肉体派ビジネスマンが協力し合い、ロシア・マフィアと組織内部の裏切り者に戦いを挑むアクション映画です。偽ブランド商品に爆弾を隠すというアイデアは面白いんだけど、これが物語の味付けだけで終っているところが残念。偽ブランドの流通ルートや、超小型爆弾の性格付けをもっと練れば、サスペンスの度合いが増したと思う。

 例えば日本かアメリカの税関で、香港から輸入された偽ブランド品が摘発される。商品をチェックしていた税関の係員が、中からボタン型電池のようなものを発見。中身を調べようと分解しかけたところで、超小型爆弾が大爆発する、というオープニングはどうか。爆弾は既に世界中にばら撒かれている。爆弾は衛星からの特殊な電波で爆発させられるのだが、同じ電波を使って、爆弾を完全に無力化させることも可能だ。爆弾の流通ルートをたどって、舞台は香港に移動。あとは自由にお馴染みのドンパチをやればよろしい。

 この映画のコンセプトは、ジャン=クロード・ヴァン・ダムをジャッキー・チェンにすることだと思う。でもジャッキー映画に必ずあるコミカルな要素が、この映画ではどうも空回りしてしまうのです。これはヴァン・ダムという役者の持ち味以前に、脚本の問題だと思う。物語自体はシリアスなのに、登場人物たちだけが、変にオチャラケてるんだよね。観ていると「お前らにまともな危機意識はあるのか!」と思ってしまう。

 主人公たちの他にも地道に捜査を進める人たちが存在し、そちらがピンチになったり捜査続行が不可能になった時点で主人公たちのオチャラケパワーが威力を発揮させればよかった。もっともこれは、『プロジェクトA』の方法論なんだけどね。せっかく香港映画界のスタッフが集まって作ったのに、なんとも中途半端な映画です。

(原題:KNOCK OFF)


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