それいけ!アンパンマン
てのひらを太陽に

1998/08/02 丸の内ピカデリー2
くらやみ谷に封印されていた大魔王とアンパンマンの戦い。
テーマ曲がいかにも古臭くて……。by K. Hattori


 『それいけ!アンパンマン/てのひらを太陽に』『クリームパンダとおかしの国』『おむすびまんとおばけやしき』の豪華3本立て。この映画は、アンパンマン誕生30周年、映画化10年、テレビ放送10年の記念映画だそうです。配給は松竹富士ですが、この映画、なぜか僕のところには試写の案内が来なかったので、わざわざ劇場まで(子供を連れて)観に行ってきました。劇場は親子連れでほぼ満席。おなじみのキャラクターが画面に登場するたびに、子供がキャーキャー騒ぐ。テーマ曲では、劇場内で手拍子が起きる。恐いシーンになると、子供が泣く。休憩時間にはロビーにアンパンマンの着ぐるみが出て握手会が開かれる。この楽しさは、いい年した大人が難しい顔してスクリーンをながめている試写室では、決して味わえないでしょう。この機会に劇場に足を運んだのは、いい体験だったかもしれない……。

 メインは長編作品『それいけ!アンパンマン/てのひらを太陽に』ですが、その前に上映される短編『おむすびまんとおばけやしき』と『クリームパンダとおかしの国』は、ばいきんまんとドキンちゃんの悪だくみを、正義の味方であるおむすびまんやアンパンマンが粉砕するという、テレビと同じストーリー展開。話は単純明快だし、人気キャラクターの活躍もたっぷり描かれているので、これはこれで楽しい作品になってます。連れていった子供は、むしろこっちの方を面白がってました。

 長編の方は、伝説になっているブラック大魔王とシャイン王子の戦いに、アンパンマンやばいきんまん以下のキャラクターたちが巻き込まれるというお話。物語のスケールは大きいし、アンパンマンたちがピンチに追いこまれるところなどもよく考えられてます。でもブラック大魔王が強すぎて、登場したキャラクターたちが次々石にされてしまうなど、展開に重苦しいところがある。テーマ曲の「てのひらを太陽に」も、物語の内容に合ってるのかどうかは疑問です。何しろ舞台になっているくらやみ谷には、一筋の太陽も差し込まないのですから。

 そもそも今回、なぜテーマ曲が「手のひらを太陽に」なのかがよくわからない。映画『僕らはみんな生きている』に使われたときは、なかなか効果的でしたけど、今回は「作詞:やなせたかし、作曲:いずみたく」という部分以外に、アンパンマンとの共通点なんてないよ。この曲はアンパンマンと並ぶ、やなせたかしの代表作ですから、ふたつを組み合わせれば相乗効果ですごい作品が出来ると思ったのだろうか……。僕はふたつが魅力を相殺し合って、かえってつまらなくなったように思うけど。映画の最後に上映される、「てのひらを太陽に」の体操風振り付けは、映画に登場しなかった何人かの人気キャラクターが登場して、子供は喜んでいたみたいだけどね。

 やなせたかしさんはアンパンマン以前にこの曲で大儲けしていると思うんだけど、ここでこの曲をリバイバルさせて、再び儲けたいのかな……。この曲が名曲であることは間違いないけど、アンパンマンには似合わない!


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