宋家の三姉妹

1998/07/30 東宝東和試写室
激動の中国近代史を生きた実在の三姉妹を描いた大作。
女性監督の細やかな視線が生きた秀作。by K. Hattori


 今世紀初頭の中国。裕福な宣教師の家庭に生まれ育った3人の姉妹の内、ひとりは革命家・孫文の妻となり、ひとりは孔子の末裔である大富豪の妻となり、ひとりは青年将校・蒋介石の妻となる。それぞれ別々の道を歩み、時に反発し、時にかばい合う姉妹の姿を通し、激動の中国近代史を描いた歴史大作です。

 主人公である三姉妹を演じる女優たちが豪華。中国で初めての銀行家・孔祥熙(コウ・ショウキ)の妻となる長女・宋靄齢(アイレイ)を演じたのは、007シリーズの最新作『トゥモロー・ネバー・ダイ』でヒロインを演じたミシェル・ヨー。孫文の妻となる次女・宋慶齢(ケイレイ)を演じたのは、『欲望の翼』『ラブソング』のマギー・チャン。蒋介石夫人となる宋美齢(ビレイ)には、ハリウッドでアジア系女優として活躍しているヴィヴィアン・ウーが扮している。姉妹の父親であるチャーリー宋に扮したのは、『太陽の少年』の監督でもあるチャン・ウェン。監督は『誰かがあなたを愛してる』の女性監督メイベル・チャン。脚本はアレックス・ロー。音楽は喜多郎。衣装デザインはワダエミ。ゴールデン・ハーベスト社、ポニー・キャニオン、フジテレビが共同出資した、日本と香港の合作映画です。

 宋家の三姉妹については、今までに何十冊も本が書かれてきたようですが、映画化は今回が初めてだそうです。今回の映画では、19世紀末から革命と戦争と中華人民共和国の設立を経て現代に至る壮大な物語を、2時間半にコンパクトにまとめ上げています。事実をもとにしたドラマではありますが、人物を創作したり削ったり、事件の日時を移動させたりしている。こうした脚色は「事実をもとにした映画」の常套手段だし、それによって物語にふくらみが出てくるのだから一向に構わない。たぶん事実だけを描いて行くと、三姉妹の夫たちの比重がもっと増えてしまい、『宋家の三姉妹』は脇に追いやられてしまうような気がする。映画はあくまでも三姉妹を中心において、その周囲に当時の歴史的事件を散りばめて行くスタイルなので、歴史についてはポイントをかいつまんで、象徴的な事件や台詞を創作したのでしょう。

 「新しい中国を担う子供たちを育てたい」という父親の教育を受け、自分たちの手で人生を切り開いていった三姉妹の姿が力強く描かれています。3人はそれぞれ自分の選んだ道を、脇目も振らずまっすぐに歩いて行きます。生き方は違っても、それぞれが自分の人生に対して誠実だから、誰も悪役にはなっていない。配給会社は「女性客がターゲット」と考えているようですが、確かに若い女性が観ると面白い映画だと思います。

 今回観たプリントには、オリジナルの字幕が入っていないにもかかわらず、日本語字幕だけが入っている部分が何ヶ所かあった。これはもともと上映時間が長いプリントを、日本版として短くカットし、説明不足な点を補う意味で字幕を入れたのかもしれない。(プロなら配給会社に電話して調べりゃいいのに……。)

(原題:宋家皇朝 THE SOONG SISTERS)


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