キャメロット

1998/07/29 ワーナー試写室
同名のミュージカルとは無関係のワーナー長編アニメ。
円卓の騎士になった少女の物語です。by K. Hattori


 アーサー王伝説の外伝とも言うべき物語を描く、ワーナーの長編アニメーション映画。円卓の騎士を父に持つ主人公ケイリーは、王宮から盗み出された宝剣エクスカリバーを探す旅に出る。途中で出会った盲目の騎士ギャレットと力を合わせ、悪漢ルーバーの陰謀からキャメロットを救ったケイリーは、女でありながら父の跡を継いで円卓の一員となる。アーサー王伝説をベースにしているが、中世から伝わっている物語ではない。原作はベラ・チャップマンの小説「The King's Damosel」。アーサー王伝説は、トリスタンとイゾルデの悲恋物語やパーシバルの聖杯探求物語など、ロマンチックなサイドストーリーを多く含む物語だ。ケイリーとギャレットの物語も、そんなサイドストーリーのひとつと理解すればよいのでしょう。ただし、アーサー王と魔術師マーリン以外に、なじみの人物が登場しないのは残念です。

 父親のかわりに戦う少女というモチーフも、1時間半弱という上映時間も、ディズニーの『ムーラン』とほぼ同じ。物語は『キャメロット』の方が面白いけど、アニメ映画としては『ムーラン』の方が見せ場が多い。一長一短で、内容的には互角といったところかな。『キャメロット』は全体がすごく駆け足で、エピソードの羅列という感じがする。こうなると結局、フォックスの『アナスタシア』だけが、大人の鑑賞にたえ得る作品ということになるのかな。ドリーム・ワークスの『プリンス・オブ・エジプト』はまだ未見だけど……。

 物語の中心は、魔法の森の中でのエクスカリバー争奪競争でしょう。アイデア満載で面白い森なのですが、大食らいの岩石男以外には、これといって見せ場がないのが残念。ここはもっと波乱万丈にしてほしかった。キャメロットに入ってからのチャンバラも、構成を工夫してもっと手に汗握る展開にできないものなのか。こうしたアニメとしての見せ場がうまく機能していないのは、絵コンテ段階で構図やアクションの設計がうまくできていないからでしょう。全体にすごく平板な印象。最初から最後まで観ても、「お、これはすごいぞ」と驚かされる場面が一度もないのは困りものだ。

 アーサー王が非力な優男で、ルーバーの反乱に手も足も出ないのが情けない。徹底的に守勢に回っても構わないから、ルーバーとの戦いではもう少し骨のあるところを見せてほしかった。でもこれは、「王に力はいらない」という、作品の主張なのかな。王は腕力で周囲を従わせるのではなく、清廉潔白な人柄と差別のない宮廷運営で、円卓の騎士たちの信頼を獲得し、平和な国家を実現しているのだろうか。「みんな平等に領土を分配しよう」「王の騎士ではない。民衆のための騎士だ」というアーサー王の思想は、封建領主というよりアメリカ合衆国大統領に近いのではなかろうか。

 アーサー王の声を演じているのはピアーズ・ブロスナン。非力なアーサー王がハマリ役。悪役ルーバー役のゲイリー・オールドマンは、歌も自分で歌ってます。

(原題:The Magic Sword - Quest for Camelot)


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