劇場版ポケットモンスター
ミュウツーの逆襲

1998/07/06 東宝第1試写室
人気テレビアニメの劇場版。最強のポケモン、ミュウツーが登場する。
同時上映は『ピカチュウのなつやすみ』。by K. Hattori


 テレビを見ていた子供たちがテンカンの発作を起こした事で有名な、人気アニメ「ポケットモンスター」の劇場版。伝説のポケモン「ミュウ」の遺伝子の化石から作られた最強のポケモン「ミュウツー」が、自分を生み出した世界を恨んで逆襲しようとする物語。こういう場合、普通は「復讐」と言うのでしょうが、あえて「逆襲」にしたのは、タイトル『ミュウツーの逆襲』に添えた英語タイトルを『MEWTWO STRIKES BACK!』にするためです。これは『スター・ウォーズ 帝国の逆襲 (THE EMPIRE STRIKES BACK)』のもじりになっている。内容は特に関係ないんですが、たぶん製作者が『スター・ウォーズ』シリーズのファンなんでしょうね。小道具として小型の立体映像を投影するメールマシンが登場し、映し出された美女が主人公たちを島に招待する場面があるのは、『スター・ウォーズ』1作目でレイア姫の映像が登場する場面を思い出させます。雲海の中をミュウが縦横無尽に飛行する場面は、『スター・ウォーズ 帝国の逆襲』のミレニアム・ファルコン号に影響されているのかも。

 試写では同時上映の『ピカチュウのなつやすみ』を先に上映したのですが、これはカラースタンダードの作品。『ミュウツーの逆襲』もスタンダード画面なのかと思ったら、幕が左右にスルスルと開いてシネスコサイズに! フォックスの『アナスタシア』に続いて、またもや新作のシネスコ・アニメが登場するのかと胸躍らせましたが、もとよりそんなはずはなく、幕は再びスルスルと少しもとに戻ってビスタサイズになってしまった。残念。僕はテレビ版の「ポケットモンスター」をまったく見ていないのですが、直前にこの『ピカチュウのなつやすみ』を観せられたため、ポケモンたちに対する親近感が生まれていました。結局、そこそこ楽しめた。それどころか、エンドタイトルに流れる小林幸子の歌で、ちょっと泣きそうになっちゃったよ。メロディラインは普通のポップスなんですが、演歌調にこぶしを利かせながらの熱唱。やっぱ上手いのヨ。小林幸子は今回声優にもチャレンジしているのですが、そちらはわざと大仰な台詞回しで演じ、完全なギャグにしています。

 子供向きのアニメとしては、「同じ仲間同士で争うのはよそう!」「みんな同じ命なんだから、精一杯生きていこう!」という単純なメッセージに落ち着ける手堅い仕上がり。下手に社会的なメッセージを持ち込まず、普遍的なテーマを持ってきたのがよかった。ところで、僕は今回の敵役であるミュウツーにまったく感情移入できなかったのですが、この映画のメインターゲットである子供たちはどうなんでしょう。ミュウツーのように、自分の出自を呪い、世の中を高みから眺めて嘲笑し、他人が傷つくのを見て喜ぶようなキャラクターが、僕にはちょっとわからなかった。小さい子供には単純な悪玉の方がわかりやすいのかもしれないけど、ミュウツーは最後に改心するのだから、最初から少しは同情できる要素を付け加えておいた方がよかったと思う。


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