スピーシーズ2

1998/07/03 UIP試写室
火星からやってきた雄エイリアンと、実験室の雌エイリアンが交配。
人類はに明日はあるのか……。ナンチャッテ。by K. Hattori


 前作『スピーシーズ/種の起源』を観ないまま続編だけ観たのですが、たぶん前作を観ても観なくても、楽しみ方はあまり変わらないと思いました。物語は単純明解。話の筋立ての面白さより、エロチックなシーンで客の目を引き、特殊メイクの毒々しさでビックリさせる映画です。前作から引き続き登場するキャラクターも何人かいるのですが、前作から持ち込んだエピソードはないようです。今回人類の敵となるのは、火星探査ロケットの乗員パトリックに感染し、地球にやってきた新たなエイリアン。パトリック=エイリアンは次々に女とセックスして子供を産ませ、猛烈な勢いで増殖して行く。パトリックの動向は予測不可能。唯一の可能性は、前作の女エイリアンから作られたクローン体、イヴのテレパシー能力を使って、パトリックの位置を確認すること。しかしそれは、エイリアンの雌雄双方を巡り合わせ、より完璧なエイリアンを誕生させる危険をはらんでいた……。

 この映画の主要モチーフになっているのは、エイリアンの猛烈な生殖本能。つまり「性欲」です。人間の管理する環境で暮らすイヴは、性欲を目覚めさせないように完全に男性から隔離し、見せるテレビ番組はセックスとは無関係の子供向き番組ばかり、さらに放射線や薬物を使って、性衝動を支配する脳内神経の働きやホルモン分泌を抑制している。彼女が一端「性」に目覚めてしまえば、それは彼女自身にもコントロールが利かない猛獣となって、すべてを破滅に導いてしまう。逆に性欲さえ完璧にコントロールされていれば、彼女は人間の良き友人になれる可能性さえ持っている。

 この映画の中では、エイリアンを「性衝動の怪物」として描き、それが人類存亡の危機を招くという筋立てになっている。この映画の中では、性欲こそが「悪」なのです。3人の宇宙飛行士たちの中で、もっとも性に対して放縦なパトリックがエイリアンに体を乗っ取られてしまうのも、そうした「性=罪」という意識の現われでしょう。これは欧米のキリスト教会が、人間の原罪を「性欲」と解釈したことに起因しているのかもしれない。今回、女エイリアンの名前が「イヴ」になっているのも、そういう意味では象徴的です。イヴは人類の歴史上、最初に男性を誘惑し、堕落させた張本人だと聖書には書いてある。この映画のイヴも、最後には「男=パトリック」を破滅させるのです。もっとも、この映画が目指しているのは、『13日の金曜日』などと同じ、ショック描写の多いスクリーム・ムービー。この映画がセックスを罪悪視するのは、学園ホラー映画と同じなのです。

 前作でシルを演じ、今回はイヴを演じているナターシャ・ヘンストリッジが美しい。彼女の再出演なくして、このシリーズを続ける意味はありません。もしパート3を作るのなら、ぜひ彼女を再登場させてほしい。マイケル・マドセンやマーグ・ヘルゲンバーガーも前作からの再登場組ですが、今回は影が薄い。仮にパート3を作っても、彼らが再度登場する可能性は薄いかも。

(原題:SPECIES II)


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