フェイス

1998/06/21 岩手教育会館大ホール
(第2回みちのくミステリー映画祭)
『フル・モンティ』のロバート・カーライルが主演したギャング映画。
監督は『司祭』の女性監督アントニア・バード。by K. Hattori


 『フル・モンティ』で一躍スターの仲間入りをしたロバート・カーライル主演のギャング映画。入念な準備のうえで現金強奪を実行したギャング団だったが、奪った金は意外にも予想をはるかに下回る額だった。危険を冒したリスクや準備費用を考えると、これはまるで大赤字。リーダー格のレイは不平を言うメンバーたちを何とかなだめ、それぞれの分け前を持たせたのだが、その夜メンバーたちが次々に襲われ、金を奪われるという事件が起こった。金の隠し場所を知っているのはメンバーだけ。裏切り者はメンバーの中にいる。レイたちは警察に追われながらも、組織内の裏切り者を探して金を奪い返すために奔走することになる。

 結束の固いギャングチームが、仲間の裏切りから次々に命を落として行くという話は、デ・ニーロ&パチーノ共演作『ヒート』にも似ている。ただし、その前段になる物語の背景部分が、まるで『フル・モンティ』なのです。強盗に参加するメンバーのそれぞれに異なった人生があり、その人生が犯罪の中で一瞬交錯する。この映画のギャングたちは、『フル・モンティ』の男たちが男性ストリップに到達したのと同じような理由で、自分たちの人生を強盗に賭けているのです。連日の寝不足がたたって、前半部分でちょっと寝てしまったため、こうした個々のエピソードについてはもう一度映画を観たうえで考えたいと思いますが……。

 監督は『司祭』『マッド・ラブ』のアントニア・バード。ロバート・カーライルとは『司祭』でも組んでいますし、今後撮影予定の作品でもカーライルの主演が決まっているといいますから、彼とは馴染みの監督なのでしょう。僕は『司祭』を観て感心したのですが、今回の映画は『司祭』とかなり方向性が違います。『司祭』が心理サスペンスだとしたら、『フェイス』は古典的なギャング映画だもんね。アクションも多いけど、きちんと撮ってます。クライマックスの警察署の描写なんて、見事なものです。シーンの組み立てが上手いのかな。『フェイス』はイギリス映画ですが、バード監督はリチャード・ギア主演映画をアメリカで撮る計画もあるとか。今後が楽しみな女性監督だと思います。

 主人公レイがもともとは共産主義の運動家で、冷戦終了後、共産主義に幻滅してギャングになったという設定が面白い。恋人約のレナ・ヘディが、主人公の母親と一緒に市民運動をやっているというのも面白かった。ただし、こうした設定が物語にどれだけの影響力を与えているかは疑問。毛色の変わったアイデアが、実を結ばないまま物語に盛り込まれているような気もします。主人公がデモ行進に参加している場面が、劇中に何度か挿入されますが、これにどんな意味があるんでしょうね。

 映画の後で配給会社の人と話したのですが、会場の明るさと音響設備の不足をすごく気にしていました。近いうちにもっと環境のいい試写室で、今度は体調を整え、眠らずに観直したいと思います。

(原題:FACE)


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