『コックとニワトリとマダムとその夫』(原題:LE CUISINIER, LE POULET, LA FEMME ET SON MARI)
料理番組を見ながら鶏料理を作っている主婦が、番組の司会者に性的な幻想を抱き、料理を作りながらエクスタシーに達してしまうという話。料理という「手作業」の官能性に溺れる彼女は、極端な潔癖症の夫との生活から逃避するように、料理が生み出すエロチシズムの中に耽溺して行く。女性器に見立てられた鳥肉をオイルでマッサージし、ワギナに見立てた鶏のおしりの穴に指を突っ込み、最後はペニスにかたどられた挽肉を鳥肉に詰め、玉葱でふたをする。その瞬間、彼女自身はオルガスムスに達するのだ。最後にちょっとしたオチがある。監督・脚本はギョーム・ツンジーニ。上映時間6分30秒。
『サンマルタン運河』(原題:IL SUFFIRAIT D'UN PONT)
監督は『ベルリン天使の詩』の主演女優ソルヴェイグ・ドマルタン。運河にかかる橋、歩行者用の鉄橋、鉄橋のほとり、運河を運行する遊覧船など、限定された場所に偶然集まった4組のカップルの再出発を描く縦走ラブストーリー。わずかな時間の合間に、倦怠期の夫婦は破綻を回避し、10年ぶりに再会した恋人たちは再出発を誓い、40年来の知り合いだった男女は人生の伴侶を見つけ、若い恋人同士はかたく抱き合い続ける。上映時間20分。
『インタビュー』(原題:L'INTERVIEW)
往年の大女優エバ・ガードナーに単独インタビューすることに意欲を燃やすフランス人記者が、入念な準備と根回しの末、ロンドンの彼女の自宅を訪れるが、彼の期待は無残に打ち砕かれてしまう。監督サヴィエ・ジャノリが、実際に取材した記者から聞いた実話をもとにしている。モノクロ・17分。カンヌ映画祭で、短編部門のパルムドールを受賞した作品。記者が取材に出かける前夜、バーで期待に胸をふくらませている場面に、エバ・バードナーの歌う「Can't Help Lovin' Dat Man」がかぶさってくるところはゾクゾクした。インターホン越しのインタビューに愕然としながらも、用意された質問をこなして行く記者の失望した様子が痛々しい。映画に対する愛がベースにある作品。