どつきどつかれ

1998/06/10 GAGA試写室
人気お笑いグループ・ネプチューンが初主演した岸和田映画。
モチーフのわりにはヤンチャさに欠ける。by K. Hattori


 『岸和田少年愚連隊』からはじまった、中場利一原作の「岸和田物」最新作。これは全部がシリーズというわけではないのですが、中学から高校時代を描いた『岸和田少年愚連隊』、高校卒業前後を描いた『岸和田少年愚連隊・血煙り純情篇』、高校卒業後のダラダラした日々を描いた『一生、遊んで暮らしたい』、そして今回の『どつきどつかれ』まで、なんとなく年代順に並んでますね。次は三池崇史監督の『岸和田少年愚連隊・望郷』が来ますが、これは主演が竹中直人だというから、やっぱり年代順なのかなぁ……。

 一連の作品は、毎回監督と主演俳優が違いながらも、主人公は常に原作者・中場利一(チュンバ、リイチ)である点が共通。それに、木下ほうかがいつもヤクザ役で登場するのも、だんだんお楽しみになってきた。この人はつい先日、東宝の『絆−きずな−』にも出てきましたが、いつもチャランポランでそのじつスゲー恐いヤクザの兄さん役の印象が強すぎて、ちょっとヘンな気分になったもんです。もともと喜劇の人なんですよね。軽さと凄みが一緒くたになって、ものすごい迫力があります。これはもう、本人の持ちネタみたいなもんだなぁ……。

 僕は今回主演のネプチューンという連中を知らなかったのですが、最初の『岸和田少年愚連隊』以降続いてきた「お笑いグループの主演」という方針が、今回ほどきつく感じられた映画はない。今までは1作目のナインティナイン、2作目の千原兄弟、3作目の猿岩石まで、全部コンビの物語になっていた。今回主役が3者にばらけたことで、キャラクターの結びつきが弱くなったように思えるのです。この話だと、主人公リイチと、ヤクザくずれのガイラ、それにガイラの元恋人と付き合っているチビマルを中心にするのが常道だろうに、ネプチューンのメンバーである堀内健が寺の息子のミンチを演じていることで、人物配置が中途半端になった気がする。この話って、ガイラとチビマルがすべてなんだよね。

 そんなわけで、キャラクターはやや弱いものの、映画自体は結構観られます。僕は前回の猿岩石主演映画『一生、遊んで暮らしたい』をまったく受け付けませんでしたが、今回の『どつきどつかれ』はそれに比べれば格段に完成度が高いと思う。監督・脚本は『ご存知!ふんどし頭巾』『JOKER/疫病神』の小松隆志。とりたてて特徴のない演出ですが、このぐらいの作品にはこの程度の作りでも構わないのかもしれない。

 別にこの手の映画を馬鹿にしているわけではないのですが、前回の猿岩石主演映画も含め、GAGA製作の岸和田物は、タレントのファンをあてにして、関連グッズで儲けようというマーケティング戦略がプンプン匂います。どうせまた、メイキング本だの写真集だの作って、メディアミックスで売ろうという魂胆でしょう。これに比べると、正調『岸和田少年愚連隊』を作っているのは吉本興業は、正面からタレントの個性を押し出して、きちんと映画を作っているような気がするんですが……。


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