THE GROUND
地雷撤去隊

1998/05/15 ユニジャパン試写室
『SCORE』の室賀厚監督が、今度はカンボジアで撮った映画。
脚本をもっと練っておくとよかったのに……。by K. Hattori


 『SCORE』で日本のアクション映画に喝を入れた、室賀厚監督の最新作。室賀監督は今年『ろくでなしBLUES98』も公開になるので、なんと1年に2本も劇場に映画かかかるという、一種のブーム状態が発生してます。本当ならこの調子で、どんどん映画が作れるといいんですけどね。へんに上手に映画をまとめあげる監督より、僕は室賀監督の勢いのよさを大いに買ってます。それだけに、今回の映画は楽しみにしていました。

 東南アジアの某国が舞台ですが、撮影したのもカンボジアだし、映画の舞台もどう見てもカンボジアです。タイトルでもすぐにわかる通り、この映画はカンボジアのあちこちに埋められている地雷を、地面にはいつくばって1個1個処理する男たちの物語です。日本企業がリゾート開発を進めている某国の工事現場で爆発事故が起こり、作業員のひとりが大ケガをするところから物語がはじまります。爆発の原因は、地中に隠れていた地雷によるもの。道路建設予定地は、無数の地雷が敷設された地雷原だったのです。地雷処理の専門家が呼ばれますが、人数が少なくて工期に間に合いません。そこで工事を請け負う企業の現地責任者は、刑務所長に賄賂を贈って、長期受刑者の中から地雷処理の志願者を募ることにする。こうして集められたにわか作りの『地雷撤去隊』が、見た目にはただの原っぱにしか思えない地雷原に挑みます。

 時期が時期だけに、地雷撤去をアクション映画に仕立てるというアイデアは面白い。ただこれでは、『SCORE』のように銃撃戦やカーチェイスは使えない分、地雷処理のサスペンスを脚本や演出力だけで見せる必要がある。刑務所の囚人たちを撤去隊にするというアイデアは強引だが、そうしないと主人公たちが「善意の人」「勇気あふれる賞賛すべき人たち」になってしまう。囚人というアイデアは、悪くないと思います。ただ、登場人物の数がこれきりなのだから、集められた撤去隊のメンバーにはもう少しいろいろな性格付けをしてほしかった。外国人の役者を短期拘束で使っているという限界はわかりますが、それなら余計に、脚本をもっと練っておくべきだったと思う。

 この映画は、女性現場監督として赴任してきた小森冴子と、日本人受刑者アキラの対立が、物語の芯になっている。ところが、主人公たるこのふたりの性格付けが弱い。アキラの過去はある程度描かれているが、それがしっくりしていないし、冴子のキャラクターについてはまったく何も描かれていない。このあたりをもっと描き込んでおけば、映画はもっとがっちりした構造になったはずです。つまり「地雷処理=短期的なサスペンス」「脱走の機会を狙う=中期的なサスペンス」「アキラと冴子の葛藤=長期的なサスペンス」が絡み合い、それぞれを補強しあいながらひとつの映画を作れた。この映画は、今のところバラバラです。こうした脚本の構成自体は、予算云々ではなく「知恵」や「工夫」という、直接にはお金のかからない問題です。もっと頭を使ってくれ!


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