ラーマーヤナ
ラーマ王子伝説

1998/04/30 TCC試写室
インドに古代から伝わる長編叙事詩をアニメ映画化。
歌が入るとやはりインド映画。by K. Hattori


 日本とインドが合作した長編アニメ映画。製作は日本ラーマヤナフィルム。監督・脚本・作画・音響・企画など、すべての面で日本人スタッフが関わった映画なので、本当は「日本映画」に分類すべき映画なのかもしれませんが、台詞がすべて英語であること、'96年にインド全土で既に公開済みであること、日本での公開は『ムトゥ 踊るマハラジャ』の添え物扱いであることなどを考慮すると、これは「インド映画の一部」と考えたほうがいいのかもしれない。上映時間は2時間15分。日本のアニメとしては、作画レベルが低いような気がしました。資料には「制作費8億」と書いてあるんですが、これって単位は「円」じゃなかったりして……。

 この映画の原作となった「ラーマーヤナ」は、「マハーバーラタ」と共に、古代インドから伝わり親しまれている長編叙事詩。王国を追放されたラーマ王子は、妻のシータを魔王ラヴァナに奪われるが、猿神ハヌマーンの援護を受けて魔王を打ち負かし、無事に妃を救出する。原作はさまざまなエピソードが複雑に絡み合ったものらしいが、この映画はもっぱらラーマ王子のシータ奪還に話の焦点を絞り、他のエピソードは大幅に割愛している。そのため、物語の背景やサイドエピソードについては、ナレーションによる説明で済まされてしまうことも多い。原作によれば、故郷に戻って王位を継いだラーマは、国民の中にシータの貞節を疑う声のあることを知り、心ならずも彼女と別れるはめになるのだが……。映画は「英雄ラーマ王子」に物語を限定しているので、この悲しい結末を削るのも、仕方のないことかもしれません。

 主人公ラーマ王子そのものには、僕はあまり魅力を感じませんでした。彼は完全無欠過ぎて、キャラクターとして付け入る隙がなく、面白味がないのです。同じことはシータや、ラーマ王子の弟たちに対しても言えます。彼らは高潔過ぎて、僕のような凡人が素直に憧れる対象にはなり得ない。主人公があまりにも完璧過ぎるので、この映画にはハラハラドキドキする部分がほとんどない。むしろ主人公が出会うさまざまな人物や神様、モンスター、事件などが次々登場し、「次に何が起こるだろうか?」という興味で観客を引っ張って行くものだと思う。そういう意味では、さすがに2千年近い歴史を持つ物語だけあって、次から次へといろいろなアイデアが出てきます。とりあえず、最後まで飽きません。

 登場するキャラクターの中では、猿神ハヌマーンが圧倒的な存在感を見せます。物の本によれば、ハヌマーンは今でもヒンドゥー教の神「ハヌマット」として、人々の信仰を集めているそうです。「西遊記」に出てくる孫悟空のモデルだという説もあるとか。

 全編アニメで台詞は英語なので、あまり「インド映画!」という感じがしませんが、物語の中で突然登場人物が歌い始めると、やはりそこは紛れもなく「インド映画!」という雰囲気になる。惜しいのはこの映画に歌が3曲しかないこと。もっとたくさん歌わせてくれ!

(原題:RAMAYANA / The Legend Of Prince Rama)


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