オスカーとルシンダ

1998/04/14 20世紀フォックス試写室
ギャンブル好きのふたりが仕掛けた、人生最大のギャンブル。
後半ちょいとダレるが他は全部素晴らしい。by K. Hattori



 ギャンブル好きが縁で知り合った、オーストラリアの女実業家と、イギリス出身の敬謙な牧師の間に芽生えた、ちょっと奇妙な恋物語。主人公のオスカーとルシンダを演じるのは、『シンドラーのリスト』『イングリッシュ・ペイシェント』のレイフ・ファインズと、オーストラリア出身のケイト・ブランシェット。監督のギリアン・アームストロングもオーストラリア出身なので、この映画の実体はオーストラリアと考えていいでしょう。20世紀フォックスの子会社、フォックス・サーチライトの作品なので、資本面ではハリウッド映画ですが、そんなこと言い出したら『フル・モンティ』もフォックス・サーチライトだもんね。『フル・モンティ』をイギリス映画と言うのなら、『オスカーとルシンダ』だってオーストラリア映画以外の何物でもありません。

 この映画の中では、イギリス人を演じているのがイギリス人俳優、オーストラリア人を演じているのがオーストラリア人俳優と、完全に出身地別のキャスティングになっています。ファインズも当然イギリス出身ですし、サイアラン・ハインズ、トム・ウィルキンソンなど、イギリスの匂いがぷんぷんする俳優が登場してくる。ヒロインのブランシェットの他、リチャード・ロクスボロウ、ジョセフィーン・バーンズなど、あまりなじみのないオーストラリアの俳優たちが重要な役で登場。この物語の語り手である、オスカーの曾孫の声を演じているのは、『シャイン』でアカデミー賞をとったジェフリー・ラッシュです。このあたりは徹底してます。

 時代は19世紀後半。イギリスで牧師の息子として生まれたオスカーは、幼い頃に母親を亡くしたことがきっかけで水恐怖症になる。父親と異なる宗派に改宗したオスカーは、大学時代に悪友の誘いでギャンブルの味を覚えて虜になる。一方ルシンダは、早くから良心の残した財産を相続し、シドニーに大きなガラス工場を持っている実業家。仕事の付き合いなどで柄の悪い人たちと付き合っているうちにギャンブルを覚え、その虜となった。ふたりは、オスカーが牧師としてオーストラリアに赴任する船の中で出会う。ルシンダはガラス製造に必要な機械を買いつけるためにのイギリス訪問から、オーストラリアに帰るところだったのだ。

 オスカーがギャンブルの素晴らしさについて、ルシンダに力説する場面が面白い。「人間は神の存在を信じて、それに人生を賭ける。これほどのギャンブルはない。神はそのギャンブルを望んでおられる」と言うオスカーは、一生を敬謙なクリスチャンとして終わりました。生まれてこのかた、ギャンブルに関しては負け知らずだったオスカーが、人生を賭けた最後のギャンブルに負けるはずがありません。この映画の結末には少し苦さがありますが、僕はこれを最高のハッピーエンドだと思うのです。世間一般からみると、オスカーとルシンダの関係は悲劇かもしれないけど、世間から「変わり者」と言われ続けたふたりにとっては、これも幸せだと思います。

(原題:OSCAR and LUCINDA)



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