タイタニック

1998/03/13 日本劇場
試写で観てるけど、劇場版は編集が違うので再度観ることにした。
やっぱり最後は感動して泣いてしまったよ。by K. Hattori



 この映画は昨年の11月にマスコミ向けの試写で観ているのですが、キャメロン監督が編集を手直しして、劇場にかかっているのは試写にかかったのとは別のバージョンになっています。その証拠に、試写では3時間9分だった上映時間が、3時間14分になっている。具体的にどこがどう変わったのかはほとんどわかりません。最初に試写で観たとき、少しギクシャクして見えた部分が直っているのは気付きましたが、僕が「変わったな」と思ったのはその1ヶ所だけ。字幕なども手を入れているようですが、具体的にどう変えたかまではわからない。

 この映画はアカデミー賞に14部門でノミネートされているのですが、脚本賞と主演男優賞にノミネートされていないのが話題になってました。今回改めて映画を観ると、脚本はやっぱり全然だめだと思います。主人公ローズ以外のキャラクターが、恋人ジャックも含めてひどく平板に描かれていて深みがないし、話の進め方も段取り芝居が多すぎる。この映画の中で、大きく成長して行くのはローズだけで、ジャックは最初から最後まで同じ人物。ローズの周辺にいる人物も、全員が単なる「にぎやかし」のために出てくるのです。この映画の人物描写はすごく薄っぺらだと、試写の時から気になってましたが、その印象は今回2度目に観たときも変わりません。でも僕は今回改めてこの映画を観た結果、「それでもいいのだ!」と思うようになった。

 この映画は一般的な災害パニック映画のように、事件に巻き込まれた「人々」のアンサンブルを見せ場とする映画ではない。僕は前回、周辺人物も含めたアンサンブルを見ようとして、そこに何も描かれていないことに唖然ととしました。結局『タイタニック』が描いているのは、主人公ローズの成長ぶりだけなのです。逆に言えば、ローズだけを集中して追いかけていれば、この映画はすごく面白いし、猛烈に感動できる。僕は今回そうした観方に変更して、最後は前回以上に泣いてしまった。

 2度目ということもあり、前回は何の気なしに見過ごしていた細部にも気を付けて観てました。まずラストシーンで老いたローズがダイヤを海に落とす場面ですが、あれはうっかり落としたわけではなくて、わざと海に「投げ捨て」ていることが明確に描かれてます。大ラストシーンでローズを出迎えるジャックの背後にある時計は、タイタニックが沈没した2時20分を指しています。ローズがジャックから離れてホイッスルを取りに行く場面は、字幕の「戻ってきて」がジャックに対する呼び掛けなのか、ボートに向かって叫んでいるのか不明確ですね。これは字幕にもう少し工夫があってもいいかな。

 アカデミー助演女優賞にノミネートされている、老ローズ役のグロリア・スチュアートは、一挙手一投足の中に若き日のローズ・デヴィット・ブカターを感じさせる名演技です。この映画は「絵作り」の力強さで、脚本の弱さを完全に補って余りある傑作です。『ポストマン』や『ハムレット』と違って、実りある長尺映画です。

(原題:TITANIC)



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