シャドウビルダー

1998/01/08 GAGA試写室
マイケル・ルーカー演ずる武装神父が、復活した悪魔と一騎討ち。
悪魔のデザインがなかなか凝っているのは見もの。by K. Hattori



 『ドラキュラ』と同じブラム・ストーカーの原作を映画化した、オカルト・アクション映画。舞台を現代アメリカに移しているため、どこがどう原作をなぞっているのか、さっぱり見当がつきません。こういう映画に『BRAM STOKER'S SHADOWBUILDER(原題)』なんてタイトルをつけるのは、結構大胆ではあるまいか。コッポラの作った『ドラキュラ』や『フランケンシュタイン』は、それなりに原作を追ってましたけどね……。

 悪魔復活の儀式を行なうカルト信者たちの中に、黒服の男が飛び込み、レーザー照準付きの拳銃で、その場にいた全員を射殺します。男の名はバッシー。じつはこの男の職業はカトリックの神父。武力行使を伴う教会の兵士として、悪魔復活を実力阻止するために働いているのです。「教会の軍隊がピストルで悪魔に立ち向かう」というアイデアが面白い。このあたりをもっと掘り下げて行くと、なかなか痛快で手に汗握るアクション映画になりそうですが、この映画はそこまで行かないのが惜しい。もっとも、こうしたアイデアはストーカーの原作に脚本家が付け足した「味付け」かもしれません。

 バッシー神父を演じているのはマイケル・ルーカー。『ヘンリー』という映画で、実在の連続殺人鬼ヘンリー・リー・ルーカスを演じていた俳優です。『デイズ・オブ・サンダー』でトム・クルーズのライバルを演じたり、『クリフハンガー』でスタローンの親友を演じたり、結構いろいろな映画に出ている人で、僕は結構好きな俳優なんです。特別上手いとも思わないんですけど、風貌に特徴があって、いい味出してます。

 カルト信者たちによってこの世に招喚された悪魔(シャドウビルダー)は、日蝕の日に汚れのない魂を持つ少年を殺すことで、この世界を支配することができる。幼児洗礼の時に、手足から十字架のキリストと同じように血を流したクリス少年こそ、無垢な魂の持ち主。悪魔とバッシー神父の間で、クリス少年の争奪戦が始まる。悪魔の弱点は光に弱いことで、昼間はほとんど活動できない。それでも地下道や閉め切った部屋の中など、陽のささない所では力を発揮し、次々と人間を襲う。悪魔はこうして人間の生け贄を作ることで、徐々に陽の光に対する耐性をつけて行くことができるのだ。

 影の支配者・シャドウビルダーの造形がなかなか秀逸。先日観た『ナイトフライヤー』では、吸血鬼の造形にガッカリしてしまったばかりなので、今回も似たようなものかとあまり期待しませんでした。ところが、全身黒ずくめの長身長髪姿で、顔やカラダにはメタリックな光沢があるという設定のシャドウビルダーは、なかなか格好いいです。ここにいるのは、神の非造物の出来損ないではなくて、神からすべてを奪おうとする黒い神です。容姿には、それなりの威厳や神々しさが必要です。悪魔の化身である黒い犬にもメタリックな効果を施すなど、監督が特撮マン出身だということで、この映画は細かいところで描写に凝ってますね。ちょっとした拾い物です。


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