欲望の街・純愛篇
紅い疾風

1997/11/21 ユニジャパン試写室
女の子たちがカッコよすぎて、脇にまわった男たちがかたなし。
『欲望の街・古惑仔』シリーズの姉妹篇。by K. Hattori



 香港で若者たちに大ウケしている『欲望の街・古惑仔』シリーズの姉妹篇。香港の盛り場にたむろする女の子たち(古惑女)を主人公に、恋と友情と暴力と裏切りと生と死が渦巻く青春ドラマになっている。物語の構成がやや平板に感じますが、エピソードを次々つないで行くことで、ストーリーにある種のうねりが出ていて面白い。古惑女たちのリーダー格、マーブルを演ずるのはロレッタ・リー。親友バンに『天使の涙』のカレン・モク。マーブルに夢中になっている町のチンピラ、ジョージにン・チャンユー。マーブルの昔の恋人ワンに、マイケル・トンが扮している。

 この映画に登場する女の子たちに比べて、男はどうも存在感が弱い。ワンは黒社会の若い幹部で、マーブルとバンの双方に愛されるという役柄だが、演じている役者がそれを受け止める強さを持っていないように感じた。直前に観た『古惑仔』シリーズの番外編『欲望の街・外伝/ロンリーウルフ』のトニー・レオンあたりと比べると、やっぱり役者の格が違うんだよね。比べてもしょうがないんだけど、似たようなイメージの役だし、隣接する映画ということでついつい比較してしまう。また、マーブルに恋するジョージも、ン・チャンユーだとちょっと軽いんだよね。ここは一種の要になる人物なんだから、別の描き方があってもよかったんじゃなかろうか。振られ役だけど、大事な振られ役です。

 物語が奇妙に入り組んでいて、それが物語の腰を弱くしている。物語の方向性を一本に絞って明確にすれば、この映画はもっと面白くなったし、強い仕上がりになったと思う。基本はマーブルとワンの恋の物語で、そこに振られ役のジョージとバンをからめ、恋敵(敵役)のアイジーを立てるという人物配置に一応はなっています。しかし、「マーブルとワンの恋愛劇」という基本ラインが終盤まではっきりと浮き上がってこないのは問題。僕は一途なジョージを応援していたんだけど、いつのまにやらするすると恋の鞘当てから後退してしまうのには「あれれ〜」という感じだった。バンがワンを愛していいるという設定も、うまく生かされていない。彼女はワンを愛しているし、マーブルのことも大好きだからこそ、自ら身を引くわけですが、そうすることのできる強さと寂しさを描き損ねてしまったようだ。

 これは僕が日本人だからかもしれないけど、ちょっと心情的に納得できない場面もいくつかあった。逮捕されたジョージの保釈金を作るため、マーブルが体を売って金を作ろうとするところがワカラン! いよいよ最後の最後になったらそれも仕方ないけど、この映画では「お金が必要よ!」「よし、稼ぐわよ!」という呼吸でホイホイ体を売り物にしてしまう。気になる。僕の感覚が古いんだろうか。もうひとつ、マーブルの友人が恋人に騙されて、金を奪われた上に集団レイプされてしまうくだりも、観ていて不愉快だった。レイプするなと言っているのではなく、そこまでの過程がどこか不自然なのです。


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