メン・イン・ブラック

1997/09/17 イマジカ第1試写室
トミー・リー・ジョーンズが真面目にバカバカしい役を熱演して大成功。
最初から最後までたっぷり楽しめる年末年始の大本命。by K. Hattori



 年末年始の映画興行でひとり勝ちすると予想されている、トミー・リー・ジョーンズとウィル・スミス主演のSFコメディ。密かに地球に訪れている宇宙人たちを地球人の視線から守り、地球への不法入国(入星)を防御する黒服の男たち。宇宙人を目撃した人たちの前に必ず訪れるという「黒服の男たち」の存在は、アメリカではかなり有名な都市伝説だそうですが、そんな与太話を大金つぎ込んで映画化してしまうハリウッドのエネルギーには恐れ入るばかりです。監督は『アダムス・ファミリー』のバリー・ソネンフェルド。『ゲット・ショーティ』がいまいち低調だったので気になってましたが、それを吹き飛ばす快作に仕上がっています。

 2時間を越える映画が増える中で、1時間37分という上映時間が何より嬉しい。これなら普通の映画館で1日たっぷり5回転の興行が打てます。週末は6回転も可能かもしれない。内容は盛りだくさんで、切り詰めるべきエピソードは切り詰め、たっぷりと見せた方がいい部分は観客に惜しげもなく見せるサービス満点ぶり。観客が見たい部分は全部絵になっていて、どうでもいい部分はあっさりと割愛してる潔さが、この映画にスピード感を生み出しているのです。

 例えば、ウィル・スミス演ずる捜査官Jの私生活や、トミー・リー・ジョーンズ扮する捜査官Kの過去など、エピソードとして描こうと思えばいくらでも肉付けできる部分はあるんですが、あえてそれをしない。主人公たちの私生活や過去が描けれていない分、彼らの行動の動機づけなどは弱いのですが、そこを演出の勢いで難なく乗り切ってしまうから、映画を観ている間はそんなことまったく気になりません。『ゲット・ショーティ』で人物像のディテールという泥沼に足を取られて失速した経験が、ちゃんと活かされているのでしょう。強引でもなんでも、物語でぐいぐい観客を引っ張って行く姿勢が徹底していることが、この映画のよさでしょう。

 CGやマペットを多用した宇宙人の造形は見事。宇宙人の造形を担当したリック・ベイカーは、今回もいい仕事をしてます。中でも人間型ロボットの頭部に座っている小さな宇宙人は、まるで生きているように表情豊かです。『最高の恋人』『フィーリング・ミネソタ』などで「いい人系」の役を演じていたビンセント・ドノフリオが、原形を留めないほど変形して行くのも見応えがありました。ドノフリオはこの映画と前後して主演作『草の上の月』も公開されるはずですが、『メン・イン・ブラック』だけ観ると、彼がどんな顔形なんだかさっぱりわからないでしょうねぇ。本当はなかなかの男っぷりなんですけど、この映画ではさんざんだなぁ。

 社会的なテーマも、胸を打つ人間ドラマも何もない映画ですが、活動写真としての醍醐味は全編にあふれています。映画を観ている間はワクワクドキドキ、映画館から出た瞬間にすべてをきれいさっぱりと忘れられる、正統派の娯楽大作に大満足の試写でした。


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