L.A.コンフィデンシャル

1997/09/16 ヤマハホール(試写会)
なかなかに骨太の犯罪映画。こいつは男の世界だぜい!
キム・ベイシンガーがちと中途半端かな。by K. Hattori



 1950年代初頭のロサンゼルスでは、警察権力の強化でマフィア不在の極端に清潔な町が出来上がっていた。しかしその裏側には、映画の都ハリウッドを中心に、人間のさまざまな欲望が渦巻く暗黒都市としての顔も持っている。この時代と場所を背景とした映画には、昨年公開された『狼たちの街』がある。警察が支配するロスの町にマフィアが入り込もうとすると、警察の実力部隊であるハットスクワッドの面々が登場し、マフィアを半殺しにして町の外に放り返す。(ハットスクワッドは実在したモデルがいるらしい。)この『L.A.コンフィデンシャル』にも、警察がマフィアを実力で排除して行く様子が克明に描かれている。時代と場所は同じロサンゼルスだから、同じロス市警の中にハットスクワッドの連中もいたはずなんだけど、そのあたりはよくわからなかった。ラッセル・クロウ演ずる男はそれっぽかったけど、4人組ではなかったなぁ……。

 コーヒーショップで起った強盗殺人事件を発端に、きらびやかなロサンゼルスの町の暗部があらわになるという筋立て。登場人物はほとんどが刑事たちで、女っ気はほとんどなし。唯一キム・ベイシンガーが「ベロニカ・レイクそっくりの娼婦」という役で花を添えますが、もう少し若い女優は使えなかったのかなぁ……、というのが僕の感想。ベイシンガーは年をとりそこねたまま、こうしていつまでもズルズルとセクシー路線で行くんだろうか。今の時点で、これがかなり苦しい状態になっていることは明白。よる年波には勝てず、若い女を演ずるにしては、いささか図々しく感じられる歳になりました。同じようなセクシー路線でも、メラニー・グリフィスがとっとと老けた役に挑んでいるのとは対照的です。どこかで方向転換しないとまずいと思うんだけどなぁ……。

 今回の映画では、相手役が若手で売り出し中の俳優だっただけに、キム・ベイシンガーとのギャップが目立ってしまった。ラッセル・クロウやガイ・ピアーズと並ぶと、キム・ベイシンガーは貫禄がありすぎる。ケビン・スペイシーと並べば、まだまだ「若い女」で通るかもしれないけど、クロウやピアーズと並ぶとはっきり「おばさん」だもんなぁ……。女優って気の毒。

 映画は謎解きとしては、もつれた紐が一気にほどけるようなカタルシスに乏しく、スッキリしないところも残りました。一応すべての謎は解消するんですが、それを言葉で説明しすぎて、映画としては面白味に欠けます。監督のカーティス・ハンソンは、『ゆりかごを揺らす手』や『激流』を撮った監督。安心して観られる娯楽作品作りに実績はあるようですが、「これが目玉だ!」というゴージャス感を出すのが苦手な人なのかもしれない。この映画でも、「おお!」と驚く場面が1ヶ所あるだけで、あとは比較的平凡な絵作りになっている。

 キム・ベイシンガーもへんでしたが、この映画で一番へんなのはダニー・デビート。この人が登場すると、シリアスな映画がいきなりコメディぽくなります。


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