死亡遊戯

1997/09/08 徳間ホール(試写会)
ブルース・リーの死後、残されたフィルムを編集して作った遺作。
本人が登場するのは全体のごく一部。by K. Hattori



 ブルース・リーの残したフィルムを使い、合成や代役撮影、古いフィルムの使いまわしで、新しい劇映画を1本作ってしまったのが、この映画『死亡遊戯』だ。(原題が『THE GAME OF DEATH』だから、このタイトルって直訳だったんですね。)ブルース・リー本人が登場するのは、終盤のクライマックスで、敵の本拠地のフロアをひとつずつ上りながら、タイプの異なる数人の格闘家と対戦する場面のみ。クライマックスも、物語とのつなぎにあたるアクション場面は代役を使って撮影しているので、正真正銘「ブルース・リー出演」と言えるのは、全体の数パーセントだと思う。本人の出演カットは、そこだけ他のシーンとは画面の色合いからして違うので、すぐにわかってしまう。ブルース・リーのファンにとっては、ここだけが見どころなんでしょうが、1本の映画として見ると、逆にここだけが浮いていると思いました。

 映画の中にブルース・リーを再登場させるため、ドラマ部分やアクション部分では、風貌や体格の比較的よく似た俳優(じつは全然似てない)を使って代役撮影しています。じつはこの「代役を使ったアクション場面」がわりと面白いのです。立ち回りの組み立てやカメラ位置を工夫して、なるべく主人公の顔が画面に入らないようにしていることに加え、ブルース・リーの「個人技」が持つ迫力を、複数人の「団体技」に置き換えようとする発想の転換が見られます。結果としてそれが、新撮カットと本人の撮影カットの違いを、ますます際立たせる結果になっているのは事実ですが、僕はこの映画の中盤までを普通のアクション映画として楽しみました。最後の方にチラリとブルース・リーが登場するのは「オマケ」だと割り切って考えられれば、この映画はそれなりに面白く観られると思います。

 この映画を観ていると、僕はブルース・リーより、彼の息子ブランドン・リーのことを考えずにはいられなかった。ブランドンの代表作であり、遺作でもある『クロウ/飛翔伝説』は、撮影中のブランドンの事故死の後、代役や合成を使って完成された映画です。そういう意味では、『死亡遊戯』とまったく同じと言っていい。『死亡遊戯』には、犯罪組織の殺し屋が映画撮影に使う空砲を実弾に詰め替えて、主人公の暗殺を謀る場面があります。ブランドンの死も、撮影中の銃に実弾が紛れ込んでいたことから起った「事故」だとされていますから、まるでブランドンの死が、父親の遺作『死亡遊戯』をなぞっているようではありませんか。

 もともとこの映画は、ハリウッド時代にリーが武術を教えていたバスケットボール選手、カリーム・アブドゥル・ジャバーが香港に立ち寄った際、「いい機会だから映画にでも出てみない?」みたいな軽いノリで声をかけたことから始まったようです。リー本人が、本当にこれを1本の映画に仕上げるつもりがあったのかどうかは不明。ブルース・リーの死後、プライベートフィルムが商用映画として出回ってしまったというのが真相かもね。


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