キラークイーン
舌を巻く女

1997/06/13 シネセゾン試写室
面白いんだかつまらないんだかすら判断に困るような不思議映画。
ひょっとしたらすごいのかもと思わせる大駄作。by K. Hattori



 なんだかスゴイものを観せられてしまった。なぜこの映画が真っ当な配給ルートを通じて映画館で上映されるのか、それがまったく理解できない。配給の東北新社は、どんな理由でこの映画を買い付けてしまったのだろうか。東京はただでさえ劇場が不足しているのだから、この映画の上映に劇場を割り当てるぐらいなら、別の映画に劇場をタダで貸した方が、日本の映画文化のためになると思うぞ。とにかく出鱈目、とにかくチャチ、とにかくいいかげん、とにかく行き当たりばったり、とにかくわけわからない映画だ。いや、単純に「物語」という側面から見れば、この映画は決して難しい映画ではない。話は頭から順を追って、わかりやすい描写で誰にでも理解できるように語られている。わからないのは物語ではない。なぜこの映画を作ろうと思ったのか、この映画を通して製作者たちは何を語ろうとしているのか、それがわからない。たぶん、そんなものはないのだろうが……。

 謎の隕石の不思議なパワーで、舌が別の生き物になってしまった女。同じパワーで、飼っていた4匹のプードルもオカマの男に変身。女の舌は次々と人間の命を奪い、いつの間にか人間の言葉をしゃべるようになり、女とセックスして妊娠させる。このわけわからん物語に、聾唖の修道女リタや、女の恋人である受刑者、サディストの刑務所看守、主人公たちを付け狙う銀行強盗仲間などがからんでくるのだが、どのエピソードも「だからどうした」というものばかり。これを一言で「つまらない」といってしまうことさえためらわれるような、突き抜けた物語展開には驚く。何か狙いや意図があって、それが外れている場合には、簡単に「つまらない」「駄目」「失敗」ということが言えるのだが、この映画のように狙いも意図もまったく見えてこない場合は、それが成功なのか失敗なのかすら判断できなくなってしまう。

 要するにこれは、コメディなのか、ホラー映画なのか、サスペンス映画なのか、ショック映画なのか、それすらわからない。コメディにしてはテンポが悪い。ホラー映画にしてはふざけすぎ。サスペンス映画にしては間延びした芝居が多すぎる。ショック映画にしてはいつも次の展開が読めてしまうのが致命的。

 全体にへんにエッチな描写が多いのだ。隕石パワーで変身した女の黒いコスチュームも、身体にぴったりとまとったラバーファッションが気になる。お風呂で勝手にフェラチオをはじめてしまう人食い舌。シスター・リタが砂漠を放浪しながら1枚ずつ着物を脱ぎ捨てて行くシーンなど、どきどきしながら観てました。エッチならエッチで、それを徹底してくれればもっと面白くなっただろうに、全体にどうも中途半端ですね。

 こんなにチャチな映画なのに、主人公の女の口から人食い舌が出たり入ったりする場面などで、ていねいなデジタル合成をしていたりするんだよね。こうしたアンバランスさが、観ている者に何かを期待させるんだよな。とにかく最低ですが、へんな魅力がある映画です。


ホームページ
ホームページへ