SPACE JAM

1997/04/28 丸の内ピカデリー1
NBAのスター選手マイケル・ジョーダンが「ルーニー・テューンズ」に出演。
実写とアニメのなじみは見事だけど話にはなじめない。by K. Hattori



 ワーナーブラザースの家族向けブランド、「WBファミリー・エンターテイメント」のタイトルには、WBのロゴにもたれてニンジンをかじるウサギのキャラクターが登場します。あれがバッグス・バニー。この映画はNBAのスーパースターであるマイケル・ジョーダンが、ワーナー映画のスーパースターであるバッグス・バニーと共演したスポーツ・コメディです。オープニングタイトルにはちゃんと、主演俳優としてマイケル・ジョーダンの名前とバッグス・バニーの名前が登場する。このウサギは単なるアニメの絵ではなく、ちゃんとした人格を持った存在として受け止められているのです。僕はそれにちょっと感心したし、感動もしてしまいました。

 映画はマイケル・ジョーダンの少年時代のエピソードから始まります。夜中に庭のゴールポストでシュートの練習をするマイケル少年を、父親が優しく見守る。このプロローグからオープニングタイトルにかけての勢いには、最高にワクワクさせられました。願わくは、この勢いが最後まで維持できれば言うことなかったんですが……。正直、映画の内容はいまひとつでした。

 NBAのスーパースター、マイケル・ジョーダンの映画デビュー作と受け止めるにせよ、大画面で見る「ルーニー・テューンズ」として受け止めるにせよ、どっちつかずの中途半端な映画になっていると思うのは、僕がバスケットボールにもワーナーの漫画映画にもさして関心がないせいかもしれません。NBAもルーニー・テューンズもアメリカ人にとっては馴染みのものですから、マイケル・ジョーダンとバッグス・バニーの共演は、アメリカ人なら「夢の共演」なのでしょう。でも純日本人である僕には、イマイチよくわからないのです。残念。

 少し前に、同じように実際のNBA選手が登場する『エディー/勝利の天使』という映画がありました。あの映画はスポーツ物の定石を踏まえていない、やや単調な印象の映画でしたが、今回の『SPACE JAM』はそれよりずっと豪華だし面白い。スポーツ物の定石を最低限踏まえていて、まずは安心して見られます。でもこの「最低限」ってのは、本当に最低レベルをクリアしているだけ。この素材とこれだけの技術があるのなら、この何十倍も面白い映画が作れるはずなのに、なぜかそうなっていないのは不思議です。個々のエピソードやギャグで笑いは取っているのですが、面白さはそこ止まり。全体を見終わった後の満腹感がありません。スナック菓子で空腹をごまかされたような気分です。

 端的に言ってしまえば脚本が悪いのだと思う。登場人物もジョーダンとバニー以外は影が薄い。アニメのキャラクターはともかくとして、ウェイン・ナイト演ずる球団の広報係や、ビル・マーレーの扱いはもう少し何とかならなかったのだろうか。特にビル・マーレーが「この映画の製作者と友達だから」と言ってアニメの世界に登場するくだりは、ギャグとしては面白いけど、ファンタジー映画の興がそがれることおびただしい。


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