THE DEFENDER

1997/02/02 銀座シネパトス2
ヒロイン菅野美穂の可愛らしさ以外に見るべきところはあまりない。
この内容でコメディにしなかったのが失敗だね。by K. Hattori



 佐野史郎はともかく、柳葉敏郎はどう見たって体育会系で、天才ハッカーには見えないでしょうに。これは完全にミスキャストだよ。物語も支離滅裂で、アイディアとお話がぜんぜん合ってないんだよ。現実の秋葉原を舞台に、デジタル空間から抜け出した格闘ゲームのキャラクターと主人公が戦うというアイディアは、まぁ悪くないということにしておこう。少なくとも目くじら立てるほどのことじゃない。だけど絵として見るとマンガ以外の何物でもないこのアイディアと、政府の謀略云々というミステリーを絡めるところがいかにも苦しい。まるきりチグハグじゃないか。ヒロイン菅野美穂の魅力があるから、この映画はかろうじて観ていられるんだけど、途中何度か投げ出してしまおうかと思ったぞ。

 菅野が柳葉のもとに持ち込んだ謎のCD-ROMが物語の発端なんだけど、CD-ROMの中になぜ20年前のデータが入っているのだろう。20年前だと大容量データの保管にはまだ磁気テープを使うのが普通だったから、これは元データがどこかにあって、それをCDにコピーしたものなのだろうか。そもそも菅野はどこから現れたのか、なぜ二重人格なのか、どんな目的があって柳葉に近づいたのか(近づかされたのか)、一切が疑問のまま。このあたりは、「菅野美穂って可愛いよね」という観客の気持ちに甘えて説明が一切ない。

 柳葉のもとに次々やってくるテレビゲームの戦士たちは、どこから送り込まれ、なぜあんなマンガチックなスタイルで戦うんでしょう。彼らが幻影でないことは、戦いの場に見物人がいたことや、主人公の腕の傷で立証されている。戦いに敗れた戦士たちは、どこに消えるのでしょうか。誰が秋葉原まで連れてきて、どうやって回収しているのでしょう。まぁ、目がいっちゃってる田口トモロヲの二刀流戦士は楽しめますし、戦闘に負けた梛野素子が神田川に飛び込む大胆さには驚きましたけど……。

 秋葉原という限定した空間で物語を進めようというアイディアは買うけれど、その割には人物の動かしかたなどで舞台を生かしきれていないんだよね。秋葉原なんて15分も歩けば御徒町や神田に抜けていってしまうような、すごく小さな街じゃないですか。一方で昔ながらの古い街ですから、大通りから裏道まで、表情はわりと豊かなんですね。なのになんで、登場するのは万世橋とラジオセンターだけなんだろう。ラストシーンも、あの場所からわざわざ「じゃんがらラーメン」食いに行くなよ。「肉の万世」でしゃぶしゃぶでも奢ってもらえ、菅野!

 電子データの修理屋という商売はアイディア賞なんだけど、やってる内容や道具立てがアナログでリアリティがないんだよなぁ。さんざん期待させるウィザード探しも、CDの内容が修復できたらそれでお役御免とはもったいない。アイディアが物語の中で消化できてないって感じ。まぁ最初から無理のある話なんだけどさ。

 マイケル・ビーン主演映画『タイムボンバー』に物語とビジュアルがかなり似てる。たぶん真似でしょう。


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