プロジェクトA

1996/12/08 ニュー東宝シネマ1
(『ファイナル・プロジェクト』公開記念試写会)
ファン投票によるジャッキー・チェン映画の人気第1位作品。
海上警察と海賊の対決を描く大活劇。by K. Hattori



 日本のファンが選んだ、ジャッキー・チェン映画のナンバーワン。ジャッキーの新作映画『ファイナル・プロジェクト』公開を記念したイベントだが、東宝はこれを「試写会」と呼んでいる。(なぜだ?)『プロジェクトA』はこれが日本で最後の劇場上映になるとか。

 通常の興行に支障をきたさぬようにとの配慮から、朝7時に開場、7時半開映という「ケチ」を絵に描いたようなイベントスケジュール。松竹なら夕方から通常の興行を1回つぶして試写会やるぞ。(これも余所の会場が借りられないからかもしれないけど……。)冬の朝早くからの上映では、どうせ人なんてほとんどいないだろうとタカをくくっていたのだが、香港映画ファン(ジャッキー・ファン)のパワーや恐るべし。朝7時のニュー東宝シネマ1は、すでにファンの熱気に包まれていた。

 物語は今世紀初頭の香港が舞台。海賊たちの横行に打つ手がない海上警察は、その責任をとらされて活動を停止。海上警察の隊員たちは、ライバルである陸上警察に編入される。海上警察の代わりに海賊退治に派遣された英国海軍は、逆に海賊たちに拿捕され、香港政府は窮地に追いつめられる。提督は海賊たちとの裏取り引きまで考えるが、それをジャッキーにたしなめられ、秘密作戦「プロジェクトA」の発動を決意。ジャッキー・チェンをリーダーに、海賊のアジトに急襲をかける。

 話の骨組みがしっかりしている上に、前編アクションテンコ盛りの娯楽大作。酒場を舞台にした大人数での喧嘩シーンは、次々に繰り出される古典的なドタバタとギャグで大いに笑わせてくれる。自転車を使った追っかけは、アイディアいっぱい。大掛かりな自転車チェイス場面は、この映画ぐらいでしかお目にかかれない。海賊のアジトでのスピーディーな立ち回りもハラハラドキドキ。

 以前ビデオで見た時は、クライマックスで海賊の頭目ひとりに大勢で組みかかる部分に引っ掛かりを感じた。あれは卑怯なんじゃないか。1対1で戦うのが本道なんじゃないかと思ったわけです。でも今回改めて映画を見直すと、これはこうするのが正しく思える。

 まず第1に、あの海賊がやたらと強い。大勢の無法者たちを、己の腕力と胆力だけで束ねている男です。それと1対1で戦えるほどジャッキーが強かったら、この話そのものが成立しなくなってしまう。第2に、この映画はチームプレーの物語です。最後にジャッキーとあの頭目とを一騎打ちさせる方法はいくらでも考えられるんでしょうけど、最後の最後まで仲間とチームで戦うことに、あえてこだわっているように思えました。

 ジャッキー・チェンがただのアクションスターでないところは、古今東西のアクション映画をじつによく勉強していることでしょう。時計台にぶら下がる場面は、大昔のサイレント映画『ロイドの要心無用』に出てきた場面からの引用です。酒場の場面でのスラップスティックにも、そうしたジャッキーの古典的素養を強く感じます。「温故知新」という言葉が彼の映画には生きています。


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