ミッション・インポッシブル

1996/08/23 スカラ座
ブライアン・デ・パルマ監督、トム・クルーズ主演の「スパイ大作戦」。
終盤の列車アクションシーンは一見の価値あり。by K. Hattori


 僕はテレビ版「スパイ大作戦」の現役世代ではないけれど、再放送と「新・スパイ大作戦」を見てました。だからやっぱり、このテーマ曲を聞くと胸が高鳴りますね。オープニングからメインタイトルにかけてのテンポはすごくよくて、シャープでタイトな編集と共に、これから始まる活劇に思いをはせます。主演はトム・クルーズ、監督はブライアン・デ・パルマ。東欧に潜入している西側スパイの名簿を巡る物語ですが、東西スパイの諜報戦という冷戦時代の定石が使えないため、組織内部の裏切り者を探すという、ちょっとひねった話になっています。

 スパイの名簿を横流ししようとする現場を押さえ、関係者を全員逮捕せよと命じられた、お馴染みジム・フェルプス以下IMFの面々。しかし作戦は失敗。IMF側の動きは何者かに察知されており、チームは全滅。チームの中に裏切り者がいたのだ。命からがら脱出に成功したイーサンは、作戦内容を内通した裏切りの張本人としてIMFからも追われることになる。しかし生き残ったのは彼だけではなかった。イーサンは持ち出された偽の名簿に代る本物の名簿をエサに、裏切り者の正体を暴くことを決意する。目指すはCIA本部奥深く厳重に保管されている、西側スパイの名簿である。

 アクション映画としては水準以上のできだと思うのだが、サスペンスの根幹である「裏切り者探し」の部分に弱さを感じる。四面楚歌のイーサンが、疑心暗鬼になりながらも実現困難な課題をひとつひとつクリアして行く過程のスリルと、駆け引きの妙味が希薄なのだ。孤立無縁な心理状態の中で誰が裏切り者かと常に疑いつつ、それでも仲間に対する信頼なしに作戦を遂行することはできないから、そこにドラマが生まれるんじゃなかろうか。この映画の中には、そうした厳しさがない。

 「スパイ大作戦」の面白さは、各分野のスペシャリストが明確に役割を分担し、それぞれが超一流の技術を駆使してひとつの作戦を成し遂げるチームプレーの力強さにある。ひとりひとりは決してスーパーマンではないのだが、全員が揃うことで針の穴からラクダを通すような「不可能作戦」を可能にしてしまう。その意味では、今回の映画『ミッション・インポッシブル』は主人公であるトム・クルーズが活躍しすぎだ。イーサンが変装の達人だという本来のキャラクターも、物語の中ではあまり発揮されていない。中盤の山場であるCIA進入では、ちっとも本来の特技である変装を見せないではないか。

 クライマックスの列車上での活劇は予告編でも少し見せていたけれど、本編で通しで観ると一層の迫力。アイディアとしては「未来少年コナン」や「ルパン三世」にあったようなものだけど、それを実写で見せてしまうと迫力の質が違いますね。

 この映画にはジャン・レノやエマニュエル・ベアールが出演しているんだけど、ヨーロッパの役者をハリウッドで撮ると表情に陰影がなくなって退屈だなぁ。ジャン・レノは『フレンチ・キス』でもそうだったでしょ。


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